森野c5果実

この世界の片隅にの森野c5果実のレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
5.0
あちこちに暗喩と伏線があり、見返すたびに気付きがあるので立て続けに3回も観てしまいました。
なので取り挙げたい点はいくつもありますが…

ほのぼのとしたタッチでありながら捻りがあり、暗黙の相互理解を使っているのが実に渋いです。

特に印象的だったのは
すずと晴美(義姉の娘)が空襲に遭って公共防空壕に逃げ込んだシーンです。
壕から出ると街の建物はめちゃめちゃになっており、自宅が建っていたであろう場所を前に、茫然と立ち尽くすひとりの女性。手にはヤカンが1つ。
お湯を沸かそうとしていた中で空襲に見舞われ、咄嗟に持ち出したのだろうか。
そんな女性に向かって「お水もろうてええですか?」と話しかけるすず。
長閑な暮らしから突然 一変してしまったことがよく分かるし、それでも淡々とする異様さが際立つ描写でした。

勿論このシーン以外にも次々に人が怪我を負ったり、いなくなったりします。
より身近な人が被害に遭う様は辛いし やるせない気持ちになりますが、本作はあくまでも市井を描いた作品であり、ごく普通の個人が戦時下で出来ることをただやる。そういう素朴な内容ですので、どうぞ躊躇せずに観ていただきたい。
森野c5果実

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