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ハッピーアワーのcyphのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
5.0
2016年2月 みなみ会館オールナイト
人生最初につきあった友だちと
2016年6月 みなみ会館オールナイト
当時つきあっていた大切なひとと
2017年4月 イメージフォーラム
当時たましいのふたごだった友だちと
2018年5月 Blu-ray
遠くから遊びにきてくれた大切な友だちと
2020年8月 新文芸坐オールナイト
痛みを分け合った好きな女の子と
2020年12月 イメージフォーラム
ずっと憧れてた好きな女の子と
2022年2月 シモキタエキマエシネマK2
人生に新しく登場した大切なひとと

先日ハッピーアワー無理だったというひとの話を興味深くふんふん聞いた後、ハッピーアワーはわたしの映画の原点なので好きとか嫌いとか言える次元ではもうないんです、と自分の口から言葉が出てきてああそうだったんだとなった 人生に登場する大切なひとがハッピーアワーを初めて観ている時間に、ハッピーアワー後の世界(と当時関西の学生たちは冗談のように名前をつけてた)に突入する瞬間に立ち会いたくて何度でも5時間17分を彼女たちの顔と苦悩と力学と過ごしてしまう

動き出した電車から見つめる/窓際に立つ桜子の虚ろな目線 芙美の渡った夜明け前の長い橋と聡明で臆病な朝 あかりと日向子との会話の宙ぶらりんさも妙に好きだ 繰り返される地獄の打ち上げ 雀卓をすっぴんで囲む幸せな時間 野勢こずえの愚かしさ 公平が進んでいくであろう長い地獄 けして手をつけられない野菜スティックやメンチカツの伏線に毎回笑ってしまうし、ワークショップという下地の効果に何度でも目を見開いてしまう 彼らがやってるのは恋愛ではなく重心のワークショップの続きなのだという頭でっかちな設計に乗れるか乗れないかが勝負の分かれ目なんだと思う 負けっぱなしなわたしには関係のないことだけど

みなみ会館のオールナイトで気づいたら能勢こずえ役の方が隣に座っていて、彼女の書いたテキストを彼女の声で聞きながら妙な気持ちになったこととか 純役の川村りらさんと公平役の方(変なTシャツを着ていて眠そうにしていた)とが休憩時間中にロビーで楽しげに喋っていて起こるはずのない奇跡を目にしたような気持ちになったりとか 拓也役のひとをライブ会場で見かけたりとか、桜子役菊池葉月さんとのその後の繋がりのこととか、大紀役の子が川村りささんの実の息子だと知った瞬間にぶり返した感動とか、フェリーでくぐる明石大橋の記憶とか ハッピーアワーという作品はもはやわたしの(あるいはわたしたちの)京都での生活やその延長にある景色と離れがたく溶け合って、気づけばすっかりわたしの世界の一部なのだ

『カメラの前で演じること』を通じて映画というものについて意識することを覚えたし、ブレッソンもカサヴェテスもここから知った 17の質問はたまに見返してはそのときの回答を思い浮かべてみる 初めてハッピーアワーを観た日から、どんどん彼女たちの年齢に近づいて、彼女たちの苦しみを肌で知るようになっていく 人生に楔を打つように、これからもたぶんハッピーアワーを見返しながらわたしなりの長い地獄をやっていくと思う



当時の感想
京都みなみ会館オールナイト(トークショーつき)×2、イメージフォーラム特別上映で観た 人生における大切な友人たちと何度でも観る もっと私を好きになりたい 円盤が出たら、ハッピーアワー中毒のみんなとこたつを囲んでぽつりぽつり喋ったり黙ったりしながら観たい
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