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パッセンジャーのTSのレビュー・感想・評価

パッセンジャー(2016年製作の映画)
4.6
【一人90年も早く目覚めてしまった男】96点
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監督:モルテン・ティルドゥム
製作国:アメリカ
ジャンル:SF
収録時間:116分
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2017年劇場鑑賞30本目。
余裕で傑作。はっきり言ってめっちゃ好きです。SF映画最高峰かも。世界的には酷評の嵐だそうですが、正直なところ1ミリも酷評する気になれない、自分好みの傑作でした。予告編では「宇宙版タイタニック」と言われていて、何をいうか!と思っていましたが、なるほどそう言っても良いかな。と言えるくらい面白い出来でした。

5000人の人類を乗せた宇宙船アヴァロン号は、120年の歳月をかけ別の惑星に向かう。ところが地球から離れて30年目で、人工冬眠ポッドの故障により一人の男が目覚めてしまう。それは、生涯を船内で終えなければならないという事だったのだが。。

設定が面白すぎる。昨今では映像技術も上がってきたため似たような宇宙映画が登場してきていますが、個人的には今作はその類のベスト。単純に宇宙映画として見ても、ジムが宇宙服を着て宇宙を浮遊する姿に感動しますし、恒星をターンするシーンなども素晴らしいです。しかし、今作に関してはそれらの美なる宇宙の要素は二の次となっており、「もし、5000人の中で自分だけ目覚めてしまったらどうするか」というサバイバル要素が際立っています。
この主人公は技師ということもあり中々利口です。まず試すべきことをすべて試します。それらを実行してからのあの行為。これは確かに非人道的と言わざるを得ないですが、仮に自分がこの立場ならどうするでしょうか?どれだけお人好しの人でもジムと一緒の行為をしてしまうでしょう。以上のことから、中盤のあの展開は予想出来ましたが鑑賞者がジムを憎く思うことは恐らくないでしょう。

それにしてもとんでもない計画です。そして自分だけ早く目覚めてしまうという恐怖。冬眠でもしなければ、人間も時間の流れには逆らえません。新天地を目指して乗船したのに道中で死ななければいけないというのは何と切ないことか。そしてそれらは歴史的にもよくあったと言えましょう。『タイタニック』なんかがまさにそれです。彼らは、特に三等客は新天地に新たな可能性を求めてタイタニック号に乗船しました。ご存知の通り、三等客のほとんどは例の事故により亡くなっています。つまり、新天地を見ずにほとんどの方が海に葬られたのです。この淡く儚い運命は、本作の主人公にも大いにあてはまることです。それを踏まえての彼の様々な行為にはやはり納得させられてしまいます。

科学的に見れば恐らく甘いシーンが多いのかと思いますが、正直そのあたりはどうでも良いです。結末が予想出来たとしても最後まで魅入るように鑑賞出来ました。そしてその結末も、予想出来たとは言え大いに感動させられるとともに、人の一生の儚さというかちっぽけさを痛感しました。『タイタニック』や、何故かな、『ベンジャミンバトン』あたりが好きな方は楽しめるかもしれません。世間にどれほど酷評されようが、僕は今作を肯定したいと思います。適度な緊張感を保ちながらも、ところどころ笑えるし感動出来る。そしてまるでアダムとイヴの物語を見ているような神秘的な展開。まさにエンターテイメント性に富んだ娯楽映画と言えそうです。
また今年のアカデミー賞では美術賞にノミネートされてましたが、視覚効果賞にノミネートしてもおかしくはないと感じました。ああいう宇宙船に乗ってみたいですね!
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