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パッセンジャーのしゃにむのレビュー・感想・評価

パッセンジャー(2016年製作の映画)
2.0
「90年早起きし過ぎた…」

息子は自分より早起き

↓あらすじ
人類の膨張に地球が耐えられなくなり新たなフロンティアを開拓すべく開拓者達がホームステッド2まで120年の船旅に出た。宇宙船アヴァロン号が地球を出て30年が過ぎた頃、小惑星群が宇宙船に衝突、衝突事故のせいで睡眠カプセルが誤作動を起こしてしまう。誤作動で目覚めた男はたった1人。目的地まではあと90年もかかる。睡眠カプセルの修復に手を尽くしたが無意味だった。自暴自棄になった男は孤独に耐えきれなくなり、見初めた女性を起こしてしまう。女性もパニックに陥り、あの手この手を尽くすが徒労に終わる。不安に押しつぶされそうになり、女性は男に次第に惹かれて行く。愛し合う2人だったが、アンドロイドのバーテンダーがつい口を滑らせてしまい、女性に拒絶される。気まずい関係になった時に船に異変が起き始め…

・感想
「早起きは三文の徳」という古人が残したことわざに真っ向から反逆する問題作。不覚にも主人公の「早く起き過ぎた…orz」という台詞に笑ってしまったが、ホントは笑うに笑えない話である。最終的にいい話風にまとめているが、主人公がヒロインにしたことを考えるとクズにしか見えなかった。もちろん事情も考慮せず頭ごなしにクズ呼ばわりするのはナンセンスである。そりゃ90年間たった1人で生きて行く、謂わば、無人島で終身刑を課せられるような残酷な運命に直面すれば、耐えられなくなって側に誰かいてほしいと思うのが自然な感情だ。しかし、果たしてエゴで他人の人生を奪ってしまうのは良いのか…と悩んでしまった。何せこれは◯と×で解決出来る問題ではないので何とも言えないから割り切れなくて厄介である。苦いモヤモヤが後を引いて物語に集中出来なかった。物語の展開にしても容易に読めるし、パニック映画の伝家の宝刀・吊り橋効果で2人の関係がどのよう読めてしまうから面白くない。最初から2人同時に目覚めて絶望的状況に協力して打開して行く展開ならまだ楽しめたかも。ゲロ甘ラブロマンスを観ると毛穴から石油が吹き出す悲しい体質の自分が石油王になったのは今作のおかげだから、宇宙のアダムとイブ的なロマンスに浸りたい方にはオススメ。おっちょこちょいなバーテンダーがサイモン・ペッグみたいな間抜け面にはニヤけた。

・宇宙のロビンソン・クルーソー
陸のロビンソン・クルーソーとは何を隠そう自分のこと、異性人との国交を断絶、自室に篭り、悟りを開く怪しげな修行で青春を浪費しているのは今作に関係が無い話だが、宇宙のロビンソン・クルーソーは自分よりも悲惨に思えた。何も悪さをしていないのに船の中で一生を終える運命づけられる。希望の航海のはずが、彼にとっては絶望の航海だ。無人島のロビンソン・クルーソーは飢えと戦う毎日だが、宇宙のロビンソン・クルーソーは衣食住すべて満たされた環境にある。1人っきりのシーンが短いのが残念。自暴自棄になってスポーツに、ダンスに、グルメに、映画に、はっちゃける程度では甘い(睡眠カプセルに眠る美女のガラス越しでナニかをしたら相当イカれていて何か納得出来たやも) 1年と言わず10年くらい孤独に過ごしてやつれ果てるくらいが良かった。状況はいい感じ。心地よい揺りかごの中で安らかに眠る開拓者達には未来があるが彼には未来はない。一世一代の船旅を快適に過ごす為の設備が充実しているが到着前に彼の寿命は尽きる。地球にSOSを送るにも回答が来るのは50年以上後のこと。絶望としか形容し得ない絶望的な状況。もう少し絶望に打ちひしがれる様子に時間を割いたらよりドラマティックになるし、その後に彼が犯す大罪にも同情出来たかもしれない。何もかも短絡的に観えて、うまいことまとめ上げられた感がして正直途中下車したかったので後120年引きこもる所存。
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