グラッデン

スパイダーマン:ホームカミングのグラッデンのレビュー・感想・評価

3.9
「MCUを理解していなくても単発で楽しめる」ギリギリの立ち位置の作品。ただし、作品単体としても、予想以上に楽しめました。
サム・ライミ監督版のような、葛藤・苦悩といった主人公の内面を描くシリアステイストではなく、等身大の10代を意識した明るくポップな作風に仕上げたのは差別化の意味も含めて良い方向性だったと思います。

「スタークに認めてもらいたい」という承認欲求が彼の原動力になるというのは、現代の若者を中心とする社会行動の投影する構造であると思いますし、対峙する敵役・バルチャーが抱える社会階層の格差と犯罪行動の相関性もシリーズ作品「らしい」メッセージ性を含んでいたと思いました。エンタテイメント要素の重みにならないように時代性を織り込んだシナリオのバランス感覚は、相変わらず凄いなと思います。

また、学生でありながら、ご近所の平和を守るヒーロー(=スパイダーマン)として日々活動する主人公の二重生活という設定を活かしたシナリオの仕掛けも良かったです。本当、自分は全く気づきませんでした。

さらに、先日鑑賞した『ファウンダー』の怪演が記憶に新しいマイケル・キートンが演じるバルチャー、従来のシリーズ作品では見られなかった日常パートに登場する仲間たち、そしてスタークとハッピーのように個性の強いキャラが物語を盛り上げたのも好印象。個人的には、ハッピー役のジョン・ファブロー監督がキャストとしてもシリーズの舞台に戻ってきてくれたことは嬉しかったです。

MCUの新たなフェイズの突入を印象付ける作品であり、作品を積み上げてきた年月の経過を感じさせられました。ロバート・ダウニーJr.演じるスタークが何度見れるのか、少し寂しくも感じたり。。