グラッデン

落下の解剖学のグラッデンのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.4
雪山の山荘で落下死した男性の死因を巡る裁判を描く物語。

自殺か?他殺か?を判断する証拠がほぼ無い中、死んだ男性と妻の行き詰まった関係性が明らかになる。この情報で法廷は【主観的主張】と【客観的結論】に左右される。

刑事裁判を題材にした作品は、検察側と被告側の主張の正当性を問うための証拠・証言者を巡る物語が多いと思う。
一方、本作は、真相追求の部分が機能しない中で、あえて被告側=妻に対する疑念を呼ぶ流れを作り、鑑賞者側を神の目の立ち位置から裁判の傍聴者、あるいは陪審員の立場に擬似的に参加させている構造になっていたと思う。

序盤の事件発生の「かかり方」は鑑賞者によって個人差があると思うが、事件の真相を超えたテーマと裁判に絶妙に噛ませた構造は見事だと思う。あと、犬がすごい。