グラッデン

アメリカン・フィクションのグラッデンのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.8
Amazon Prime Videoで視聴。本年度のアカデミー賞において作品賞を含めた5部門にノミネートながら日本では劇場未公開の作品。面白くも、非常に考えさせられる物語だった。

売れない小説家の主人公は、酔った勢いで【犯罪に手を染める黒人の闇】を題材にした「それっぽい」嘘小説を書いたところ、皮肉にも大反響を呼んでしまうという物語。

所謂「正しさ」の価値観を、男女・視点を【反転】させて問いただす作品。米国における人種差別の問題は残るのは間違いないが、問題意識を刺激するためにステレオタイプ的な表現を通じて消費させるだけでは改善に繋がってないことを痛烈に批判している。(例えば、アカデミー賞作品賞を受賞した『グリーンブック』などはそうかもしれない)

こうしたエンタメ業界の闇に踏み込んだ指摘もすごいが、重々しさだけではなく全力で笑わせにきてる場面も多いのも唸らされたりする。

また、小説家である主人公の物語と並走するかたちで、アルツハイマーを患った老いた母親の介護をめぐる家族のストーリーは、高齢先進国の日本映画では割と見慣れているが、今そこにあるアメリカのノンフィクションな側面だと思った。