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光のノスタルジアのSPNminacoのレビュー・感想・評価

光のノスタルジア(2010年製作の映画)
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チリのアタカマ砂漠。そこは天文学者や考古学者が研究に集まる、過去への入り口。現在は儚く、すべては瞬時に過去となる。その過去とは宇宙の星々であり、岩に描かれた絵であり、人の記憶。残された痕跡から過去を探求する学者、遺骨を探し歩く女性たち、歴史から目を背け省みない国。
真っ青な空と火星に似た赤い大地、天体観測にうってつけな場所は同時に自国の暗部でもある。天体望遠鏡から岩、強制収容所跡や見取り図、天体写真と犠牲者の写真や遺骨といった物言わぬ「モノ」たちが、過去を語る。それを真逆の意味で掘り起こす行為があり、空を見上げる天文学者と足元を捜す遺族は違うけれど繋がっていた。そして遺族が天体望遠鏡を覗くとき、過去への視点が交わる。
静かなナレーションと静かな風景が綴る映像詩ドキュメンタリーで、尚更に痛切に訴える力があった。残虐非道な事実を乱暴に葬ろうとした人々の恐ろしさ、決して他所事と思えない。
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