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光のノスタルジアのbiyaのレビュー・感想・評価

光のノスタルジア(2010年製作の映画)
4.2
会社の同僚に薦められてみた。ピノチェト前後を少し予習。アタカマ砂漠を経由しての天体観測と独裁政権の凄惨な過去の組み合わせが強烈。星は過去を観ていて、砂漠で過去を探す人たち。ダストや夕景での遺骨拾い引きのショット、収容所佇まいが美しく逆にテーマに対してどえらく残虐に感じる。グスマンの主観ガチガチに入ってるドキュメンタリー形式も珍しいと思った。もう質問も唐突に鋭い。「天体観測と遺骨拾いも過去を探っている点で同じだがどう思う?」「同じだが、眠れない点で異なる」インタビュー受け手も言葉が澱みなく物凄い強い。希望を抱いて朝、砂漠に出かけて、家族の遺骨が見当たらずに失望して帰宅する。でも希望は捨ててない。死ぬまで見つけたい気概。遺骨も隠さず画面で鮮明に映されて思わずヴッと背けたくなる。
ラスト付近の、骨のカルシウムはビックバン以来で…みたいな下りの学者の熱意が、普通の天文学だけ取り扱った内容なら、確かに熱いわー、ってなるところが映画だと何故か冷静に、醒めて見てしまう。遺骨が埋められた砂漠に最新の設備で、自分に高い過去ではなく、遠い過去への探求探索はどうなのだろう、って。あと冒頭の月の表面クローズアップから、フェードして家の窓の木の影になるところは素晴らしかった。似ている画の連結。
最後の遺族を招いての天体観測は物語的に良い邂逅なラストだと思う反面、ジャリジャリしたヘビーな後味が残り少し鬱屈する。自分の住んでいるところや国についても、目を背けたり無知なところはないかと怖くなる。ヘビーブローなドキュメンタリー。
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