正直いってポルトガルの歴史など露ほども知らないのだが、カーボヴェルデにおける植民地支配や軍事政権下のクーデターなどの、割と普遍的にいろんな国で見られるできごとがあったことくらいは知っている。実はどこの国にも見られそうな、普遍的で容易に入り込める歴史なのだとわかる。
作中のヴェントゥーラはまさにそんな歴史の中に投げ出され、さまよい歩いているが、そこに流れる時間は完全に止まっている。どの時代のヴェントゥーラも、一人のヴェントゥーラにほかならない。
同様にキャメラは、やたら濃い影に包まれた凄い画面で、運動を時間同様に静止したものとして切り取る。しかし、それでも時折現れる前後の運動に感動もさせられる。
正直いって完全に理解し切ることなど無理だろうが、漂うだけでも楽しめる類の映画だろう。