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ニーナ・シモン 魂の歌のmendeのレビュー・感想・評価

ニーナ・シモン 魂の歌(2015年製作の映画)
4.0
ニーナ・シモンのことは『サマー・オブ・ソウル』で初めて見た浅学。でもあのステージは強くて、怖くて個性的で忘れ難いものだった。それがこのドキュメンタリーを見たいと思った最大の動機だった。

やはり激動の人生で、驚いた。
当時の黒人としては非常に珍しく幼い頃から白人教師にクラシックピアノを学び、ジュリアードに進学。でもその先はおそらく黒人ということで入学を許されない。
家族を養うために仕方なくバーでピアノを弾くが、同時に歌も歌わさせる。ピアニストを目指していたのに、大きな挫折・失望だろうが、そこからシンガーとして大成功。同時に公民権運動に傾倒。夫からの絶え間ないDVにもさらされる。
離婚後アメリカを離れるも、精神疾患が明らかになる。

葛藤が多い、というより葛藤だらけとも言える。
アレサ・フランクリンにしてもティナ・ターナーにしても黒人女性シンガーは夫からのDVが多い。「黒人女性を夫が叩くのは愛情表現のひとつ」と当時の黒人男性が言っていたというのを聞いたことがあり、まぁ自分が暴力をふるうことの正当化なんだろうけど、度を越した愚かな言いように呆然とする。ニーナ・シモンもそういう暴力にさらされていたと思うと気の毒だ。
ただ、彼女は精神疾患を抱えていて、彼女自身も周囲に暴言を吐いたり、娘に暴力をふるったりしていたというのが悲しい。

モントルージャズフェスティバルのステージが何度か出てくるが、まず登場時から、にこりともしない。緊張感すらある。

彼女についてもうひとつ印象的なのは、きわめておしゃれだということ。ステージ衣装だけでなく、普段着も、少しひねりがあって、すべてとてもよく似合っている。当時流行っていたアフリカテイストのものが多いが、こんなにファッショナブルなシンガーをほかに知らない。
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