このレビューはネタバレを含みます
火も水も雪も。橋の上には全部ある。
ファンタジーといって差し支えない狭小な宇宙からアレックスを解き放ったのは、愛と呼ぶにはあまりにも歪な、孤独への絶対拒否なのだけど、それはもう映画の宿命的自己肯定にも思えて仕方ない。
この映画を観た後では、愛することは与えることだなんて崇高な理屈はとても受けつけない、むしろこう言うべきなのだ、愛することは奪うことだと。
アレックス三部作の中でもっとも惨めで、文字通りアレックス=レオス・カラックスの主体性が、ミシェル=ビノシュによって奪われていく終盤の展開がたびたび熱心なファンから非難されることも多い本作だけど、その弱さが好きだ。