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死の谷間のpanpieのレビュー・感想・評価

死の谷間(2015年製作の映画)
3.7
出演者は「アイ、トーニャ」でなかなか良かったマーゴット・ロビーとキウェテル・イジョフォー、クリス・パインの3人だけ、「コンプライアンス 服従の心理」のクレイグ・ソルベが監督した今作、楽しみにしていた。
やっと観に行けると楽しみにして行くと公開から3週間近く経っているのに小さい映画館は八割方人で一杯で驚いた。



誰もいない街。
そこを防護服に身を包んだ人間が一人、無人の店に入り物を物色しお金も払わず持ち帰る。
本当に誰もいない様だ。
店も寂れている。
図書館で本を読んでいると静寂を破るタイマーの音が鳴り響く。
慌てて帰り支度を始める。
死の灰に覆われた世界。
生存者は誰もいない。
連なった山々と深い森に囲まれた第2のエデンと言われたこの谷で奇跡的に生き延びたアン・バーデンはかつて家族と共に暮らしていた農場で愛犬ファロと共にたった一人で暮らしていた。
彼女は敬虔なクリスチャンで信仰を頼りに孤独と闘いながら農作物を作り時に祈りを捧げ心の拠り所にしていた。
そこへ一人の男が現れた。
彼の名前はジョン・ルーミス。
彼は科学者で汚染が始まった時地下で研究をしていた。
運良く難を逃れたジョンはやっとの思いでこの谷に辿り着き汚染された滝で水浴びしようとしている所をアンに助けられる。
アンは献身的に介護しジョンは一命を取り留める。
やがて二人は強い信頼で結ばれ次第に惹かれ合い将来を約束する様になる。
ただアンは信仰心厚いクリスチャンなのに対しジョンには信仰心はない。
それだけが二人の障害だった。
二人の間に信頼と愛情が芽生え始めた時もう一人生存者が現れる。
その男ケイレブはジョンより若く美しく信仰を持っていた。



↓ここからネタバレあります。↓






この展開、普通に三角関係の恋愛ものでよくあるけれど生存者が3人だけというおまけ付きの設定で後から来た男は若く美しく、しかも白人だった。
ケイレブはジョンと違って信仰心がありアンにとってはあまりにも魅力的で一瞬で魅了されるのもよく分かる。
対してジョンは無宗教で黒人でおじさんで、だけど頭が良く将来の生活を思うと彼なしでは生き延びるのは難しい。
小娘のアンでなくともそんな計算はできる。
でも理性より本能に心が掻き乱されてしまったアンのとった行動も酒が入っていたし抑えていた理性は消え失せ分からなくもない。
翌日ジョンがただならぬ二人の目配せや態度を読み取って身を引くと言い出す。
人種差別的な描き方なのかもしれないがジョン自身が自虐的に自分が黒人だからと言う台詞もあり生存者が二人の時はそんな事は考えないだろうがもう一人増え選択肢が増えた事によって余計な付加価値が生じてしまった。

ケイレブがもっと横柄で暴力的な男なら簡単に追い出せばいいと思ったかもしれないが彼はクリスチャンで意外にも慎み深く自分の立ち位置が分かっており立ち去ると言う。
しかしアンと酒が入った上での間違いだったとしても3人の関係は既に微妙に変わっており本当に出て行くのかさえも掴めない状況に変わってしまった。
はじめは関係を迫ったアンを押し留めゆっくり関係を築こうだなどと余裕をかましていたジョンだったが自分が次第に蚊帳の外に追いやられていると危機感が芽生え始めたジョンの焦る気持ちも分かるしお互い危険な感情が芽生え始めた時期にあのシチュエーションは避けられなかっただろう。
科学者のジョンの考えで滝で水力発電をする為に水車を作り設置する時ケイレブは一度足を滑らせそうになってジョンに支えられほっとして笑い合った後の真顔で見つめ合う沈黙が恐ろしかった。
そしてどうなったかカメラは沈黙し観ている私達には何が起きたのか真実は分からない。


想像でしかないが私はやはりジョンが殺したのだと思う。
汚染された水で溺死するにはケイレブは防護服を着ていたし逆にジョンは着ていない。
ではどうやって殺したのか?
アンには「ケイレブは出て行った」と言うがどうやってケイレブを〝処分〟したのかは全く分からない。
数年先かあるいは数日後かいずれにしてもアンには分かってしまうのではないか。
これから一緒に暮らして行く伴侶となるのだからジョンはアンを侮ってはならない。
自然とそういうのは相手に分かってしまうのだから。
男女の関係になるってそういう事だから。
信じていた相手が嘘をつきアンを手に入れる為にケイレブを殺したと分かったらアンはどうするだろう。
ケイレブとの情事はアンには切ない思い出として蘇りこれから先の二人の穏やかな生活を脅かすかもしれない。
ジョンの犯した罪が明らかになってしまったらアンは他に頼れる人間がいない世界でどう折り合いをつけていくのか?
もしかして数年経ちアンより若い女がこの谷を訪れる事があるかもしれない。
そしてジョンを取り合いになりケイレブとアンを争ったあの時を思い出しその時になってあの時のジョンの気持ちがやっと分かるのかもしれない。
もしもアンがこんなに若く美しくなければどうだった?
もしもジョンが若くてケイレブが年配だったら?
最初に戻ってジョンがケイレブを殺してなかったら?
私の想像力は果てしなく続き考えているうちに僅か3人の登場人物で構成されたこのストーリーをベタではあるが日が経つにつれ面白いと思うようになった。

宗教絡みの映画だと何かで読んだ様な気がする。
聖書を基にしているのだろうか。
地味だったが面白かった。
クリス・パインの色気はこの状況では余りにも罪でありまさにケイレブそのものだった。
ジョン役のキウェテル・イジョフォーも気難しいくせにアンに夢中な頭のいい中年男がぴったりだった。
3人だけの生存者。
美しく広がる大自然。
「ウォーキングデッド」さながらの見慣れた無人の街の描写もなかなか良かった。
これから世界が何処へ向かうのかは分からないがただのSF映画には思えなかった。
山奥の深い森に囲まれた谷で生き延びる事が科学的に可能なのか全く分からないがもしもこんな状況になったら信じられる家族ももういなくなってたった一人で生き抜いていたアンの様に強く生きられるだろうか。
作り事と考えるにはあまりにも近い未来に起こりそうな設定が色々想像を膨らませる事が出来て面白かった。



お盆休みで思い立って突然機種変更をしたらフィルマはデータ移行は出来てホッとしたものの下書きは移行されなかった!
でも消えてなかったから良かったです。(;ω;)
使い慣れたスマホを後日下取りに出す事になっているので見写し書きして投稿しました。
疲れた〜〜!
休み中に幾つか溜まっていたレビューを書いて下書きに入れてあるのでまだ暫く見写し書きは続きそうです〜(;_;)
心の準備もないままに思い立っての機種変はフィルマが移行できるかハラハラして家に辿り着くまで本当に怖かったです。
下書きは上げてから機種変する事を強くお勧めします。
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