レインウォッチャー

ビル・マーレイ・クリスマスのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

3.0
クリスマスは誰にもやってくる。
あなたにも、わたしにも、ビル・マーレイにも。

クリスマスシーズンを扱った映画やドラマ、特にUSAのものを観ていると、クリスマスというひとつのテーマの下でこんなにたくさんのスタンダード曲を(トラディショナルからポップスまで)広い世代で共有できていることが少し羨ましく思えてくる。
これはやはり教会の果たした役割が大きいのだろうなと思うのだけれど、共通認識がある分そこからの派生も逆張りも生まれやすく、文化の層が指数関数的に深くなっていくのだろう。

そんな広大なファミリーツリーだからこそ、末端にこんな珍品が生まれるのも納得だ。
自称キングオブクリスマス、ビル・マーレイと過ごす一夜。彼のキャラクターそのままの、どこまで本気かわからない惚けて捻くれたパーティになっていながら、なんだかんだ愛されている。
マーレイ氏は一度引退を本気で考えていた時期があったらしいのだけれど、ウェス・アンダーソンやソフィア・コッポラが引き留めたそうだ。この一時間にも満たない小さな作品は、まさにそんなエピソードを表しているようでもある。

メインディッシュ的存在としてはマイリー・サイラスが目立つけれど、わたしがいちばん嬉しかったのはジェニー・ルイス(ウェイトレス役)の参加だ。歌う楽曲もまた大好きな「Baby, It’s Cold Outside」だし…。そういえばこれも、可愛らしく誰かを引き留めるための歌だった。

たまには、ねえ、あと「ビル・マーレイ・クリスマス」だけ一緒に観ない?って言ってみてもいいかもしれない。
…打率低そうだけれども。

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以下はまったく本筋と関係ない話。

今作の原題は「A Very Murray Christmas」。
つまりビル・マーレイの「Murray」(実音は「マリー」に近い)を「Merry」とかけている洒落になっているわけだけれど、こういう英単語の「どこからどこまでがダジャレとして成立するのか」っていうことが以前から気になっている。
日本語ベースの感覚とは似ているようで明確に違うところもありそう(日本でカタカナ語だとダジャレになり得るが、英語ネイティブ圏に戻すと成立しない。またはその逆、等)で、調べてみたくも流石にどうやって検索すれば良い本や文献がヒットするのかわからない。来年の自由研究目標にしようかな…