シネマJACKすぎうら

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐのシネマJACKすぎうらのレビュー・感想・評価

4.5
※↓出演しているネット番組でも本作を紹介させていただきました!↓
https://youtu.be/3EhSWlODEP0

舞台劇にはない、映画ならではの楽しみ方のひとつ。それは、役者の”抑えた”演技を味わえることではないかと思う。

本作は、まさにそんな楽しみ方を堪能できる一本。出演している役者も何気に豪華だが、どの演技もほどよく抑えられていて、それでも登場人物の感情や佇まいが強烈に表現されている。

特に主人公のひとり、編集者マックスウェル・パーキンズ演じるコリン・ファースの演技は”超”印象的。一見、朴訥としていながらも、ジュード・ロウ演じる作家トマス・ウルフへの溢れんばかりの愛情を、そう多くはないセリフと微妙な表情の変化で表現し切っている。

特に忘れられないシーンが2つ。序盤、処女作の編集作業を二人が始めた頃、トムがマックス宅に初めて招かれるシークエンスの中で。食事のあと、”家族に失礼がなかったか?”と気にするトムをみつめるマックスの表情。目尻の筋肉(?)の微妙な動きで、トムへの深い友情(擬似的な父子愛とも言える)を表現してしまっている。

2つ目はラストシーン。ネタバレになりかねないのであまり状況は言えないが(笑)。
ある手紙に目を落としたマックスが思わずとる”さり気ない所作”。これが私の涙腺を破壊してしまった。

さらに、この映画はスイングしたジャズの調べも素晴らしい。おまけに、中盤にあるジャズバーでのシーンでは、この作品が音楽映画の側面を持つことまでも観せてくれるのだ。