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ビリー・リンの永遠の一日のフライのレビュー・感想・評価

ビリー・リンの永遠の一日(2016年製作の映画)
4.1
イラク戦争に出征し、偶然の出来事から英雄として帰国した青年ビリー・リンが経験した1日を通し、戦争の悲惨さや兵士の苦悩に無関心な、企業やマスコミ、市民など、色々な部分の醜さや嫌らしさを感じる事が出来る作品。

ビリー・リンを演じたジョー・アルウィンの甘い風貌が、戦争や兵士を題材にした作品として、序盤違和感を感じたが、優しい性格や設定含め内容とも上手くリンクしていて終盤では適役としか思えなかった。更に周りのキャスト陣の素晴らしさもあり、作品としての面白さをより一層感じた。

新兵としてイラク戦争に出征した19歳童貞のビリー・リンが、戦闘に巻き込まれたマスコミの置き忘れたカメラに偶然映っていた事がきっかけとなり、亡くなった上官の葬儀を名目に英雄として凱旋帰国するのだが、彼らを取り巻く周囲の思いや対応など、見る者に色々な感情を投げ掛ける作品。
英雄としてのビリーや兵士達に絡む家族、企業家、マスコミ、一般市民など、色々な事情や想いで戦場に向かう兵士達の気持ちとの温度差や違和感を感じる展開は見所。

立場の違いから感じる強い憤りや虚しさなど、色々なものまで見えてくる、ある意味社会の縮図まで教えてくれる映画だった。
民意を伴わない戦争の裏にある政治や、マスコミを利用したプロパガンダ、企業の利益利用など醜いものが見えたり、ビリーや家族、兵士達と一般市民との温度差は悲しくなるし、強い憤りを感じた。
無情な世の中において、ビリー・リンの出征理由含め秀逸な設定と、終盤に向けての葛藤は、単に兵士としてだけでは無く、人としての強い信念と、想いを感じる事が出来き、胸が熱くなるものが。
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