ミーハー女子大生

レディ・プレイヤー1のミーハー女子大生のレビュー・感想・評価

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)
3.8
"現実逃避"で見えてくる"現実"

最近社会派作品が多かったスピルバーグ監督の宇宙戦争以来の久々のSF活劇映画。
(製作総指揮ではいっぱいありましたが)

正直、ストーリーとしては、 なんでこうなるの、と言う展開も一部あるのですが、 まずトレーラーハウスを積み上げたような(どう見ても危険) バラック小屋から主人公が地上に降りて行くオープニングシーンでこれから何かが起こりそうなワクワク感が漂ってきます。
バック・トゥ・ザ・フューチャーのオープニングのワクワク感を思い出しました。

そして最初のカーレースのシーンの映像に圧倒されます。
CGを使った映像では過去最高の面白さではないかと思います。

ゲームはよく知らないので元ネタの面白さはわかりませんがシャイニングの世界には大笑いしました。
クライマックスのガンダムは感涙ものです。

”自分探しの旅”とは半分揶揄もこめてよく使われる言葉で、これをテーマにした映画も多く作られていますが、 この映画は(若干ネタバレですが)一言で言えば”他人探しの旅”。 莫大な遺産を残して死んだオアシスの創業者が、 他人に自分を探させる物語です。
劇中で再三使われるローズバットと言う言葉がそれを暗喩しています。

”現実”のシーンも大半はCGが使われていると思いますが、VRのシーンのCGとは微妙にタッチを変えてあり、VRの世界はリアルのようで”いかにもゲームの世界”と言うタッチの CGで描かれているところがミソです。

戦いはあくまでVRの世界の中の話なので VRの世界でいくら死んでも、殺しても、 現実の世界で死者が出るわけではないので 安心して見ていられます。
それが「夢落ち」のように緊迫感を削いでしまう映画もありますが、 この映画ではそれはなかったと思います。

なので、悪役がウェイドを始末しようとして、 彼の近しい人を殺してしまうシーン(この映画唯一の殺人シーン)はどうにかならなかったのかと思います。
ウェイドが”宝”を見つけるのを阻止したいのなら強制労働センターに放り込むとか、他に手段はあったと思いますが・・

映画の舞台は格差社会がさらに進行し、人々は夢や希望を失い、現実世界から逃避して1日中仮想現実空間「オアシス」に入り浸っている、というとんでもない世界です。

ただ、スピルバーグは”現実からの逃避”を頭から否定はしていません。
辛くつまらない現実の世界と離れた別の世界に夢を見る、と言うのは映画そのもの。
平日は平凡な青年が週末の”ディスコ”でだけはヒーローになる、サタデーナイトフィーバーの主人公と同じです。

一方で、そこにどっぷりつかってしまってはお終い (ゲームに大金を費やす人も現実にいると知って驚きました) ということもしっかり描いています。

また、VRの世界の戦いとそこで戦っている人たちを現実世界側から映しているシーンが交互に出てくるのですが、そのマヌケぶりに大笑いします。

ジュラシックパークで描かれる、恐竜を現代に蘇らせる夢と人間が生命を勝手にもてあそぶ不遜さに対する警鐘、 どちらもスピルバーグが持っている気持ちだと思います。

結局のところこの映画の”現実”で描かれているのは、今の格差社会の問題です。
現実からいったん”逃避”することによって、 逆に”現実”がはっきり見えてくることもあるもの。
この映画でもその点を描いていると思います。

ストーリー 4
演出 5
音楽 4
印象 3
独創性 3
関心度 4
総合 3.8