里紗

バービーの里紗のレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.3
良かったー!なんだか健気に頑張っているバービーたちに涙しつつも楽しんで見れました。
世ではやれファシズムだのフェミニズムだのと揶揄されていて、確かにそこの皮肉や風刺はあれど結局誰の味方でもないんでないの?と思えるぐらいの気持ちいい描き方で好きだった。内容以外での揉め事も一旦横に置いといて。

唐突に冒頭から“2001年宇宙の旅”オマージュシーンから始まり、その圧倒的バービーの存在感に笑う。シュールというよりカオス的笑いが常に混在してて、なのに世界線はピンクピンクピンク!のハッピープラスチックだから面白い。これに留まらず、別作品のオマージュが沢山見えてワクワク。

ふざけるシーンは思いっきりふざけ散らかしている。ライアン・ゴズリングの嬉々とした遊びっぷりが見事だった。たまに素で笑ってそうなところも見えたりして。
争うシーンもそもそも『争いってなんだ?』みたいなことを思ってそうながらもそれっぽい交わり合いを繰り広げるのが最高に笑った。いつでも私たち『○○の振り』ばかりをしてないか?みたいな。見た目を整え、体裁を整え肩書きが付くバービーたちに権利を主張しながらも、そんな素ぶりをするばかり。というのもまたこれ風刺の一つだよなあ。

また話が進むに連れ、いわゆる「定番型」のバービーだからこその苦悩も見えるのが良かったなあと。
綺麗じゃなくちゃいけない、素敵でいつも笑顔で可愛くて文句のないお手本バービーでいるべき。他の誰もそう言わなくたって、世の中や人や流れによって沢山刺された痛みが自分で自分にそう思わせる。
みんなの憧れバービーというものが、どんなふうにみんなを傷つけていたか今の自分なら痛いほどよく分かる、って流れがリアル。これを演じるマーゴット・ロビー自身にも覚えがあるのではないかと思えてくるぐらいに彼女が綺麗で、いい作品だなあと思った。

「今の自分にはまだ答えが出せない」というのが、今の自分の答えでも良い時もある。ここまで有名なブランドが攻めたテーマで描かれた、センスのある作品でした。
里紗

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