二式

アイリッシュマンの二式のレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
3.7
デニーロ、アルパチーノ、ジョーペシが出演し、イタリアマフィアの話を本人のモノローグをつけながら回想して、長回しがあり、最後にはキリスト教要素が混じるというスコセッシ監督のいろんな要素が詰まった集大成映画。一人の人生のターニングポイントを一つ一つ丁寧に描いているので話が壮大。偶然裏社会と出会い、そこで生きることになった男の半生を、ブラックユーモアを交えながら少し引いた目線で描いている。マフィアの話なのに思ったより暴力シーンはなく、淡々と話が進んでいく。仕事としてさらっと悪事を指示して淡々とこなすマフィアたちが恐ろしい。登場人物が多く、トラック運転手組合というに馴染みのないものの話なので、事前に知識を入れておかないとわかりにくい。人情があるようで、結局損得のみのマフィアの人間関係がむなしい。切ない終わりで心にズシンとくる。

休憩なしの3時間30分は長い。少し記憶が飛んでる。でも、この長さに意味はある。3時間かけて語られた人生。その長い人生が終焉を迎えようとするラスト30分こそがこの映画の本番と思う。昔は力があった者たちが老いてあっけなく死んでいく。その老いた姿が惨めでただただ悲しい。そこで考える人生の意義。神様に祈りを続けるフランクの救いのなさ。超ベテラン監督のスコセッシだからできるラストで衝撃的だった。

だれもが面白い映画ではないし、興行的に成功するタイプではないけど映画らしい映画。賞レースにも関わってくると思う。劇場で見る価値はある。
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