シネマJACKすぎうら

マイケル・ムーアの世界侵略のススメのシネマJACKすぎうらのレビュー・感想・評価

4.0
マイケル・ムーア作品は今回が初鑑賞。

いきなりサスペンス映画ばりの音響効果ありで始まるオープニング。そして嘘かホントかわからない”人を喰ったような”プロローグのナレーション(笑)。ウケる。

「世界侵略」なんて、そもそもタイトル自体も人を喰ってる感満載だが(笑)、要はアメリカ社会をよりよくする為のアイデアを”侵略の戦利品”に見立てて、世界各国(主に欧州)を取材するというドキュメンタリー・エンタテインメント。

もちろんドキュメンタリーとはいえ、そこに編集やナレーション等が加えられている時点で、純然たる記録映画ではない。かならず制作者側の意図や物語性を込める演出が施されている。

この映画が面白いのは、その”演出性”をモロ出しているところ。なんなら”劇映画”と思ってもらっても全然構いませんから〜 ♫っていう潔さ、というかノリが全編に溢れている。エンタメとしても完成されているのだ。きっとマイケル・ムーア作品全てに当てはまる特長なのだろう。

ある場面では爆笑し、ある場面では「へ〜、そぅなんだ〜」と感心しながら、いつのまにやら涙目になっている自分に気づく。
なぜだろうか?
きっと幸福を追求するため必要な”仕組み”は、それを司る思想や哲学が必要不可欠なのだということを教えられたからかも知れない。そして、人間って”捨てたもんじゃない”んだよって温かいものが、取材先の社会に息づいているからなのだろう。

実は、本作の紹介する社会制度の中で”法整備”の面では、日本もあまり遜色のないものがある(少なくとも、アメリカの”それ”とは雲泥の差)。ところが本作で取材された国とは、実態がまるで異なる。きっと(日本では)制度を適切に運用するための思想や哲学が、まだ世の中的に共有されきれていないからなのだろう。