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レディ・バードのBaadのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
3.9
等身大の青春映画、とは、よく言われることだけれど、ここまでなんの飾りもなく脚色を感じさせない青春映画は珍しい。

そういう意味で見応えはあったが、とにかくあるあるで普通なので特に面白くはない。監督は『大人は判ってくれない』のような青春映画を目指したというが、それは失敗していて全然違うタイプの映画に仕上がっている。
とはいえ監督が『大人は判ってくれない』の反発しあっているが実は深い愛情で結ばれている親子関係をこの映画に持ちこうもうとしたのはわかるし解釈も正しいとは思うがそれに関してはセリフの説明が多くうるさすぎ。
『大人は判ってくれない』の成功の一因はドキュドラマ的演出にもあったのだけれど、このキャスティングでは無理っぽいし。

兄が通う公立高校でナイフで傷害沙汰が起きたからと、主人公は高そうなカトリックの私立校に通っているが、その結果、昔は羽振りが良かったらしい父親の仕事が上手く回らなくなった後でもなんとか中流の下ぐらいの暮らし向を維持している一家であるようなのに貧乏というセリフがよく出てくる。

ここ20年ぐらいで大学の学費が急騰したので日本も似たようなことになっているが、アメリカは大学の学費が高いのは昔からなのね。それに着々と手を打って希望を実現していく主人公も学校のサポートも適切でその辺は感心する。主人公の嘘やズルの大半は恵まれている同級生に追いつくための背伸びなので、年齢的には仕方ないのかな?

お母さんの愛情表現の結果としての口うるささはああいう仕事をしている割にはちょっと過剰なのだが、最後の明かされる事情から、なるほどと思った。その辺のありがたさも鬱陶しさもよくわかる。

サクラメントって、田舎というよりは地方の中核都市のような所なんですね。なまじ住みやすいと抜け出しにくいので主人公が必死になる動機はよく理解できました。

特にラストに向けて説明過剰になって失速した感は強いですが、資料的価値がとても高かった。

(2021/9/24記)
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