回想シーンでご飯3杯いける

母よ、の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

母よ、(2015年製作の映画)
3.3
イタリアの大御所、ナンニ・モレッティが手掛ける、映画監督として活躍する女性に降りかかる受難を描いた作品。

離婚、反抗期の娘、撮影の難航、そして余命宣告を受けた母親。女性特有の情緒の揺れがとてもリアルで、観ているこっちもかなりナーバスになってくる。

特にアメリカ人俳優バリーが撮影に参加してから巻き起こす騒動が、傍から見ればおかしいものの、なかなか厄介。スタンリー・キューブリックと仕事をした事があるという自慢話(でも出演シーンはお蔵入りになったらしい)等、業界人の嫌な部分を凝縮したような人物で、ナンニ・モレッティによる業界批判的な意味合いが込められているのではないかと思ってしまった。

映画の撮影を題材にした映画という事で、その多重構造や、主人公の妄想等、構成がやや難解である。この辺りをどう解釈するかで作品の見え方も変わって来ると思うが、そこを紐解くポイントとなるのが、監督本人が主人公の兄として出演している点だ。男女の違いこそあれ、仕事や母親との関係で疲労困憊する主人公は監督本人を投影したものであり、彼女を優しく見守る兄は、監督が求める救済という構図である。つまり本作品は、監督本人が自らを救済するべく製作した作品と言えるのではないだろうか。