叡福寺清子

あなたの旅立ち、綴りますの叡福寺清子のレビュー・感想・評価

あなたの旅立ち、綴ります(2016年製作の映画)
4.0
老害バーさんが死期を知ったこときっかけで自分の人生を振り返り,最後だけは善人たれという姿を描いた・・・とは趣が異なる作品でした.こんばんは三遊亭呼延灼です.
一言でいうなら,「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」でございます.
半世紀ほど前,ハリエット・ローラーという自分に絶対的自信があり,また事実極めて有能な女性が広告会社を起業します.女性の経営者が珍しい時代.あたかも砕氷船が氷海を砕きつつ航海するように,偏見や差別そして困難を破砕しながら会社を大きくしていきました.ですが,その自負故に老いたる現在は他人への評価が厳しい偏屈な人として認識され,邸宅にただ一人という生活を送っています.ある日お悔やみ記事を目にし,自身の訃報記事を生前に完成させる事を思いつきます.そこで新聞社を訪ね,訃報を専門とするアンに作成を依頼しますが・・・
そのアンは訃報記事を職としていますが,手帳にエッセイを書き綴りいつか出版を,という夢があります.しかし幼少期に母親に捨てられた出来事が,自分が原因ではと心に痼になり自信がもてずにいます.

自己肯定の塊であるハリエットさんと,失敗を恐れ一歩を踏み出せずにいるアンさん.二人の紡ぎ綴る言葉と物語はとても心地よいものでした.二人だけではなく,新聞社の編集長,ラジオ局のオーナー,ハリエットさんの元部下等々,交わされる言葉の数々がとても心地よかった.脚本のスチュアート・ロス・フィンクさん.IMDBで確認しましたが,本作の脚本のみがクレジットされてらっしゃる.才能あるんだから,もっと書けばよろしいのに.ってIMDBのあらすじって日本語表記できるんですね.今知りました.
言葉といえば,原題のThe Last Word.ハリエットは眠るように亡くなり辞世の言葉を残しませんでした.であるならLast Wordとはアンの弔事を指すのでしょう.実際アンの言葉そのものが,ハリエットを表す最上の言葉だったと存じます(斎場だけにね!).そこでアンは言います.「ハリエットは人の可能性を信じた」と.そう,他人に厳しかったハリエットですが,それを乗り越え自身と共にある人を認める人物でした.それが証拠にアンや,施設にいたお子のブレンダに与えた助言は的確であり,示唆に富むものでした.そればかりではなく,81歳でDJにトライするなど,ハリエットは人生を楽しむ事を忘れない人物,さらには失敗を恐れない人柄としてアンは言葉を紡ぎます.そのハリエットに影響されたアンとブレンダが新たな一歩を踏み出したのは言うまでもありません.

いつも以上に表現がくるくる回るアマンダ・セイフライドさん.2017年には本作を含めあと三本(うち一本はリブートのツイン・ピークス)という多忙ぶりで,しかもそんな繁忙期が現在も継続し,どっかのニ○ラ○・ケ○ジみたく高確率ハズレ馬券というわけでもありません(Jiu Jitsuはホント酷かった).
えっおまえさんも与太話ばっかしてないで,弟弟子の朱貴を見習って高座上がんなさいですって.残念でしたぁぁぁ,上がりたくても呼んでもらえないんですぅぅぅぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ナイテナイカラダイジョウブ