マルメラ

ルームのマルメラのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.5

あまりにもタイムリーすぎる映画。
埼玉県の女子誘拐事件の後なので、この映画が観客に与える印象はとてつもないだろう。

この映画の素晴らしいところは、監禁された生活から抜け出すまでで終わらないというところだと思う。
普通の監禁モノや誘拐モノの映画は脱出までを描くものが大半なのに対し、この映画
は脱出してからの苦しさを描いている。

むしろ、脱出してからの方がメインと言ってもいい。

子供の父親が誘拐犯という、一生つきまとう苦しみ。

産まれてから5歳になるまで会話したことがあるのは母親だけ。
実際に見たことがある人間も母親と誘拐犯の2人のみ。
そういった非日常から抜け出した子供に待ち受ける日常の恐怖。

母親が行った選択の正当性の揺らぎ。

日常に戻ってきても非日常が続くという悲惨さ。

これらをしっかりと受け止め、最後には小屋での生活から出たのに、狭い部屋にいることから抜け出せない母親と子供の「心の部屋」からの脱出=成長を描いています。

子供が祖母に対して言う何気ない一言。
どんな映画でもドラマでも出てくる何てことない台詞なんですが、この映画ではその言葉の意味や重みのレベルが違う。

個人的には二回は見たくないほど、重い映画でしたが。一回は絶対に見るべき映画だと思う。

監禁されていた母の父親が、少年を直視できない苦しみが凄く分かる。
孫とはいえ、誘拐犯の子供。
自分から娘を奪い、強姦した男の子供。
描かれるのは5歳の段階だが、成長していけば段々顔が誘拐犯に似てくる孫。
直視できない理由を、描かれてない部分まで想像してしまう。

先日の埼玉の事件に関しても。
助かったからよかったね。じゃないんだと痛感。
これから裁判が始まるにあたり、あの誘拐されていた少女は、あまり親に言いたくないことを証言させられるのだろう。
そして、親も聞きたくないことを聞かせられるのだろう。
家族の方が言っていた「そっと見守ってください」という言葉の重み。
でも、騒ぎ立てるマスコミ。
この映画を見て、本当にそっとしておくことの必要性を知るべきだと思いました。

映画館で観るべき映画だと思います。
かなりオススメです!!
マルメラ

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