逃げるし恥だし役立たず

ボブという名の猫 幸せのハイタッチの逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

3.5
ロンドンでミュージシャンになる夢に破れて薬物に溺れていたホームレス同然の青年が一匹の野良ネコとの出会いを機に再生していく姿を描くハートフル・ドラマ(伝記映画)。世界的ベストセラーとなったノンフィクション『ボブという名のストリート・キャット(2012年)』を映画化。
ロンドンでプロのミュージシャンを目指すジェームズ・ボーエン(ルーク・トレッダウェイ)は、夢を果たせず、薬物に依存、家族にも見放され、ホームレスとしてどん底の生活を送っていた。或る日、彼は足を怪我して迷い込んで来た野良ネコ(ボブ本人)を有り金をはたいて看病する。ジェームズ・ボーエンはネコにボブと名づけ、常に行動を共にする。そんな彼らの姿は次第に世間の注目を集めるようになるが、彼らの前に次々と試練と困難が立ちはだかり…
部屋に迷い込んできたネコが、薬物乱用で廃人同様だった若者と心を通わせ、周りの優しい人々に囲まれ勇気付けられ、どん底の生活から新しい人生を歩みだすキッカケを作ると云う、ヒューマンドラマをドキュメンタリー映画のような演出で、ネコと人間の温かい絆を心地良いタッチで描かれている。映画自体が実話ベースなので仕方がないが、特にボブが来て以降は全てが好転して、あまりに主人公にとって良い方に風が吹き過ぎている。まあ細かい事は気にせずに現代の御伽話を只々楽しめば良い映画である。親切な隣人のベティ(ルタ・ゲドミンタス)やソーシャルワーカーのヴァル(ジョアンヌ・フロガット)に編集者メアリー(キャロライン・グッドール)たちのキャストも素晴らしいのだが、ボブの表情が全てに勝っており、老若男女を問わず、ひと目見るだけで誰もがボブの魅力の虜になるに違いない。
知人の麻薬常習者バズ(ダレン・エヴァンス)に安易に現金を渡して突き放したり、隣人ベティ(ルタ・ゲドミンタス)にヘロイン中毒の治療中という事を隠したり、懐事情から路上ライブ禁止中に勝手に再開したりと、自己中心的な主人公ジェームズ・ボーエンが努力して成し得たのは禁断症状のシーンにある麻薬中毒克服のみで殆どがネコ任せ。路上アーチスト達や同僚販売員、父親の再婚相手ヒラリー(ベス・ゴダード)が嫌うのも当然で、ヘロインからネコに依存の対象を変えただけでは?と穿った見方をしてしまうが、ボブみたいな賢くて可愛いネコが肩に乗ってハイタッチなんてしたら、物語のハッピーエンドは必然の帰結なのだから、野暮なことを云わずに演技・演出を楽しめば良いだろう。
ボブが自ら出演しているので、正に本人出演による再現フィルム、ボブのぼんやりロンドン名所巡りって感じで、ネコ目線のカメラワークが非常に良く出来ていて面白い。
カワイイ眼差しでゴロゴロと喉を鳴らされたら、音楽や雑誌なんて関係なしに金も払うわなぁ…茶トラ縞模様のネコは意志が強いんだってさ…φ(・ω・`)