イギリスのEU離脱が決まったこのタイミングで本作を観ることになるとは…「今」、この世界情勢下において、『帰ってきたヒトラー』は日本人にとっても、もはや「笑い事ではない」映画である。
大戦後のグローバリズムによって世界は狭くなった。一つの国の中に様々な民族が入り混じるようになった。それによって生じた齟齬により、世界は多様性を認めない方向に舵を切りつつある。イギリスの国民投票の結果を移民問題のせいのみに帰するわけではないが、その問題がかなり大きなウェイトを占めていることは容易に想像できる。
『確かに全てを受け入れることはできない。』
イギリスは移民に対する手厚い制度によって(多分、言語の問題もあるのだろうと想像するが)、多くの移民を受け入れてきた。そして、それに付随する負の面が看過できないくらい膨張してしまった(あるいは顕在化した)のである。その結果が、先日の国民投票で4%の差となって現れたと言えよう。
僅差ではあるが、結果は変わらない。次にアメリカの大統領選が控えていることを考えると、「ナショナリズムの再勃興はここから始まった」と後世の教科書に記されてもおかしくはない状況である。
『もちろん全てを排斥するわけにはいかない。』
「どちらにも」いきすぎた思想は破滅への引き金となる。「いったりきたり」しながら冷静な議論を重ねる必要がある。そうじゃなければ本作のような「羊の皮をかぶったヒトラー」がほくそ笑むような世界に再突入してしまう。
そんな「今」だからこそ観るべき映画ではないだろうか。