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インスマスを覆う影のSSDDのレビュー・感想・評価

インスマスを覆う影(1992年製作の映画)
3.8
■概要
父は他界、母は入院しているカメラマンの男は職場を変えながら食い繋いでいた。
ある時ふと目にした蔭洲升という寂れた漁村が気になり、撮影に向かうのだが、どこかおかしく…また自分の幼少を思い出す…。

■感想(ネタバレなし)
クトゥルフ神話のファンである佐野史郎が、魚料理が生臭かったことで、ラヴクラフトの同名作品を連想し、日本版にアレンジをし映像化した。

-クトゥルフ神話-
ラヴクラフトが描いた宇宙的ホラー作品群の中で出る、人間よりも高等な宇宙生命体を他の作家とシェアユニバースとして共有した作品群のこと。
この生命体は邪神であったり、旧支配者と言われるが基本は人間が目にする、または言葉を聞いてしまうだけで発狂してしまう理不尽な存在。下位の存在であれば目にしたり、意思疎通できるが人間を超える知識、存在のせいでなんらかの精神・身体的影響が発生してしまう。
基本海産物に強い恐怖心があったため、魚類や甲殻類、タコなどが奇妙に組み合わさったビジュアルのものが多い。
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原作を読む際には海外の1930年を想像するが、それを1990年代の日本に置き換え、地名を漢字を当て込んでそれとなく観せていく方式は斬新。

蔭洲升(インスマス)、赤牟(アーカム)、陀金(だごん)など原作の地名や名前を日本らしくしているのは良いアレンジ。

佐野史郎の無機質でどことなく他人事な演技と、石橋蓮司の最低限迎え入れているが何か隠したような演技であったり、村人のなんとも言えない間や表情もあり、低予算ながらよく出来ている作品。

なんともマニアックな作品で原作を知らないとなんともいえない作風なのだが、当時地上波では15%も視聴率を取ったとか…テレビが強かった時代ですね。











■感想(ネタバレあり)
・インスマス顔
宇宙生命体と共生することで魚が常に採れる状態になるが、生贄や交配が進み、村人は魚に近い顔、体に変化している。
特に顔が変化が大きくほぼ人間の体に対して魚が頭になっている状態になる。

元々近親婚が多かった血筋で、死人が多かったこと。異教徒や有色人種に対する偏見などのラヴクラフトの心理が表れていると言われている。

・原作との差分
陀金(ダゴン)と呼ばれる怪異を土着の原始宗教と仏教のミキシングが定着しているという設定も、キリスト教と異教徒という原作の構図は日本に馴染みがないためアレンジした点は素晴らしい。

終盤は原作では更に怪異化が進んだ、人からならざるフォルムを持つ異形の者達に追われる逃亡劇になるのだが、本作では赤牟にいた女性を巻き込んで村に帰属してしまうというオチ。
クトゥルフや原作に明るくない人には、世にも奇妙的な短編胸糞作品としか映らないと思うが当時の反応はどうだったんだろう。

・総評
限られた予算や表現の中で自分の好きなものをどのように見せられるかを楽しんで作られた感じがするため、チープなシーンもあっても気にならない。
派手なアクションや残忍な表現はないため、退屈してしまうかもしれないがコズミックホラーの一歩にはいいかもしれない。

頭バスバス切ってたのにあの煮魚定食は頭ありなのか、口パクパクの描写からの"うわぁ!お会計!"のくだりの佐野さんの演技や間が好き。1h作品ですので国産リメイククトゥルフおすすめです。
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