あい

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のあいのレビュー・感想・評価

4.5

どんなときでも、それを想うだけで何度でも心が燃え上がるような存在を胸に、幼い頃の夢の中を、猛然と突き進めるひとがいる。
たとえ、他人から見ればそれがどんな夢物語であったとしても、憧れはときに明日を生きる力に変わる。

だからルパートは生きていて、だからドランも生きているのではないかなあと想像する。

「花様年華」や「ホーム・アローン」に捧ぐオマージュに、過去にドキュメンタリーではフランシス・コッポラについて言及していた言葉、「世界中の、僕と同世代のみんなへ」の言葉ではじまった、カンヌでのスピーチも思い出す。

“Let's hold on to our dream, because together we can change this world and world needs to be changed.”

夢を持ち、走り続けることについて、ドランはいつも彼自身の言葉と、作品で表現しているような気がする。

劇中でマネージャーのおばさんの言葉もまた印象深く、つまり、成功し続ける上でときに自分を偽るひと、それがうまくできるひと、できないひと、あるいは、するひとと、しないひとがいるのだ。

映画業界に対する問題意識や、メッセージについてはパンフレットの中のインタビューでもはっきり言及していたけれど、苦悩や偏見にいまだ満ちた世界で、それでも生きること、好きなことは好きと言い続けること、目指す場所へと進み続けること、あるいはその渦中で声をあげることへ、とてもまっすぐなエールを感じる作品だった。

厨房でおじいさんに語りかけられたように、ドランもとっくに誰かに憧れられ、誰かに力を与える存在であることは間違いないのに、それでも変わらず映画に描かれる先人たちへの憧れや、感謝や、焦燥が、どうしてだか、凡庸なわたしのこともいつも励ましてくれる。
 
だから、彼の過去作品と比べて作品自体の良し悪しを語るよりも前にわたしは、やっぱり、ドランの作品を観続けたいと思ったなあ。
あい

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