おたふく顔の福ちゃん

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のおたふく顔の福ちゃんのレビュー・感想・評価

3.9

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エンドロールを見終わり、初めに浮かんだ言葉は 、”見届けた” だった。この物語はフィクションで、勿論ジョン・F・ドノヴァンは実在しない。そんなことは分かっていても浮かんできた言葉は不思議にもこれだった。.
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コロナの影響で映画館に行くことができなくて、あ〜この作品も劇場で見られないんだろうな、、、と肩を落としていただけに、”やっと”彼を見届けることができたその瞬間には、成仏してね。という思いが湧き上がったほど、物語に入り込んでいた。.
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誰しも一度は”スター”に憧れたことがあると思う。しかしその憧れの裏には、彼らしか知らない密かな悲しみ苦しみがある。だからこそ彼らはより一層光り輝いて見えるのかもしれない。.
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若きスターの死去は現実世界でも悲しいことに繰り返されている。私も実際応援しているスターがいるだけあって、劇中に歯痒いシーンも沢山あった。こうやってもがき悩み苦しみながら、私たちに日々エンターテインメントを届けてくれているのかと頭が下がる思いになった。ジョンの最後の最期は”希望だったんじゃないか”というポールの憶測に心が少し軽くなり、目元がゆるみ、そうであって欲しい思うポールに、ジョンへの憧れを超えた愛を感じた。.
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また少年ポールとポールの母、ジョンとジョンの母との「母と息子」の関係が色濃く描かれているのも本作の大きな特徴。お互い愛しているがゆえに、愛が仇となりすれ違ってしまうリアルな親子関係。正直ジョンにとってみれば、自分のことを何も知らない赤の他人にゴチャゴチャ言われるより、親戚や母に否定されることの方がダメージだっただろうな。それはポールも同じだったはず。だからこそ私が応援しているスターの周りは、その人の事を理解して信頼できる人たちが居続ける優しい世界でありますように、、、と気付けば願っていた。.
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きっと、その相手がジョンにとっては、ポールだったんだろうな。.