おたふく顔の福ちゃん

1917 命をかけた伝令のおたふく顔の福ちゃんのレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
4.0

 アカデミー賞にて撮影賞、視覚効果賞を受賞していだけあって、普通の映画の見せ方とは違う本作。全編ワンカット映像(という名の、全編を途切れることなくひとつながりの映像で見せる視覚効果を用いている)にすることで、重要なミッションを与えられた若き上等兵2人と共に壮絶な一日を共にしている様な臨場感と緊張感を見事に演出しています。もし全く同じ脚本、監督、キャスト陣でも、通常の映画のように撮影されていたら、また違った印象を受けていたかもしれません。いや、たぶん受けていたはず。そのくらいに全編ワンカット撮影が効いています。
本当にどうやって撮影したのか、この映画をみれば本当にその凄さと制作陣の努力に頭が下がります。そしてよくぞこんな素晴らしい映画を作ってくれた!!!と心から感謝したくなりました。正直、冒頭部分ではどうやって撮影しているんだろう、、と考えながら見ていましたが、数分でそんなことは忘れ、完全に作品に没入してしまっていました。

 そして本作のもう一つの魅力は、これが実話に基づくフィクションであるということ。本作監督のサム・メンデスが叔父から聞いた第一次世界大戦の体験、ロンドンの帝国戦争博物館にある当事者の証言、1917年当時の西部戦線の研究を加え、仕上がったそう。

この映画の面白いところは、数カ月や数週間の戦いを描いたものではなく、たった一日、明朝までの過酷なミッションの遂行を一分一秒単位で描いているところ。撮影手法として、全てのシーンが繋がっているからこそ、これまでどこか他人事のように見ていたこれまでの戦争映画とは異なり、嫌でも物語に入り込んで、自分が3人目の伝令兵のような感覚になる。まさに新感覚。

そしてなんと言っても、残り30秒「作戦中止」の命令を届けるために、飛び交う弾丸の中を横切る命がけの300mダッシュには鳥肌と涙が勝手に溢れ出た。覚悟を決めたイギリス兵の顔つきとあの映像が頭から離れない。圧巻でした。ご馳走さまでした。この映画をネット配信待ち、DVD鑑賞はあまりにも勿体無いと思うので、迷ってたら是非劇場へ。