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風櫃(フンクイ)の少年のmareのレビュー・感想・評価

風櫃(フンクイ)の少年(1983年製作の映画)
4.0
ホウ・シャオシェンの自伝的4部作の最初の作品にして台湾ニューシネマの幕開けを告げるこの映画は青春時代の憧れが苦々しくも破天荒に描写された傑作。何をするにも一定の能力が求められる社会の窮屈さ、漠然とした展望。思いがけない方向へと進み始める運命を一歩引いた目線から見ていて、現実の回想のように移りゆく心象風景を語る。青春を映し出し、紛れもなくやんちゃで楽しい瞬間もたくさん封じ込められている一方、決して楽ではなく苦難を強いられる厳しさがあり、この年頃の幾度となく繰り返される心模様に彼は整理できずにいる。この監督の映画は行ったこともない土地へのノスタルジーをどうしてこうも喚起させるのか、不思議でならない。怪しいおじさんに騙されて、このビルに映画館があると言われて訪れた、廃墟のぽっかりとした空洞から映し出されるワイドスクリーンな景色が彼らにとっても自分にとっても大きな映画体験になったと思う。ユーモアある素晴らしいオリジナルな映画的解釈。
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