始まってすぐ、私にとって特別な作品になると分かった。
先ず、言語学と物理学のコラボでヘプタポッドの飛来の目的を解明するというシチュエーションが、知的好奇心をくすぐる。
防護服を脱ぐことによる距離感、手のひら合わせ、ホワイトボードに書いた文字、という原始的なコミュニケーションから始まるのも説得力があるし、それをデジタル化するプロセスも気持ちいい。言語体の概念やディテールも超おもしろい。
そしてルイーズのパーソナルな部分へのフォーカス。序盤は提示される時系列通りに見ていたから少し戸惑ったけれど、その戸惑いを含め、私は彼女と同期した。
だから、このミッションは勿論、ルイーズを通して感じる人間の存在意義や死生観、人類の知見を遙かに超える時空や宇宙空間。みたいなものが、絡み合いながら繋がる世界に自分の身を委ねた。すると、これがSFであることの必然性も理解することができた。
結果が分かっているにも関わらず、彼女がとった選択に、私は微塵の疑問も持たない。やはり運命には逆らえないのね…なんて感傷的にもならない。もし本当に予見した通りだったとしても、あのフラッシュバックの断片と断片の間を埋める、一日一日、一瞬一瞬こそが最も大切なのであり、この後、彼女は、その中で、他の何ものにも決してかえることのできない価値を創出し、築き上げるだろう。
これこそがアボット達が彼女に逢いにきた真の目的であり、ギフトなのだと思う。
