MARUKO

メッセージのMARUKOのネタバレレビュー・内容・結末

メッセージ(2016年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

いろいろ調べてから2回目を観て、さらになるほど(スコアも4.2から変更)。
ほんとに良くできている。
こんなに論理的なのに何一つ説明臭くない完成度。
あえて全てを語らない、考えさせられる。人間に与えられた強力な武器“言語”の持つ影響力、可能性。
みればみるほど面白い、こんな感覚になるSFは初めてだった。

助けに来たエイリアンは結局なぜ助けに来たのか、どうしてそう思い立ったのか、どこから来たのか。意思を持つ不思議。ここまで分からないと目的からして、人間が作為的に産み出したのではとまで考えてしまう。
そして彼女は中国になんと言ったのか、気になる。観賞後そうした堂々巡りの思考が頭を埋めつくし、帰宅までの記憶が曖昧になる。楽しい。

音、映像がすごくよかった。
作品を盛り上げる音楽の力は特に素晴らしかった。あまりに未知なものに出くわした時の絶妙な感情を見事に表現していたと思う。
そして誰も見たことも想像したこともないあの言語の形。あんなデザインよく考えられるよね。
終盤畳み掛けるような盛り上がりは個人的に好きで、ぞくぞくした。さらにあの文字の円のように、オープニングとエンディングがつながりループする作品構成。Hannah。
「あれ!?あのオープニングって…」ってなったときの感動と鳥肌。

サピアウォーフの仮説。これが本作の鍵となる。1回目の観賞では前知識がなくスルーしていたため、ルイーズが突然未来が見えるようになったと勘違いした。
しかしその仮説が
「言語によって思考や行動が形成される」
ということだと理解できると作品の見方が一気に変わった。ヘプタポッドの言語には時制がなく、過去現在未来もかわりなくとらえられる。そのためルイーズが彼らの言語を学ぶと、同じように時間の概念がなくなり、我々が過去を思い出すのと同じ感覚で未来が見えるようになる。徐々に理解するから徐々に見える未来が鮮明になっていく演出はお見事。
なるほどな、そういうことだったのか。

予想していたものと全然違う。いい意味で裏切られ、興味深々で観てしまった。
分からないものを目の前に、今の世界がどういう態度をとるのか。それぞれに見解を抱き、勝手に対立意識を抱き始め、通信が遮断される点、妙にリアル。
そして言語を理解することで、未来が見えるようになってしまったルイーズ。辛い未来まで見えてしまう。だがそれを受け入れると決意する愛。こんなに盛り沢山なのに、こんなにきれいにまとまるなんて。
すごいSFに出会った。

p.s. 大佐はそんなに頭が良い?笑。学者のやり方にけちをつける点、違和感しかなかった(2回目でもこの点だけはちょっと…)
あと東は嫌われてるね笑
MARUKO

MARUKO