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ピアニストを撃てのIMAOのレビュー・感想・評価

ピアニストを撃て(1960年製作の映画)
5.0
【この際だからF・トリュフォーを観直してみた。その3】

『ピアニストを撃て』を観直す。
多分トリュフォーの映画で、一番最初に観たのはこの『ピアニストを撃て』ではなかっただろうか?その辺の記憶は曖昧だけれども、この作品を観てトリュフォーにハマっていったのだと思う。
トリュフォーは彼の前作『大人は判ってくれない』にはイタリアのネオ・レアリズムの代表的な監督ロベルト・ロッセリーニの『ドイツ零年』などからの影響があった、と述べているが、その反動でこの『ピアニストを撃て』を撮ったとも語っている。
「わたしは『ピアニストを撃て』を極端にロッセリーニとは正反対の方向に持っていこうとした。アメリカ映画に対するわたしの偏愛が極端に出たと言ってもいいでしょう」(「トリュフォー最後のインタビュー」より)
『大人は判ってくれない』は自伝記的な作品で暗い一面のある話だったが、この『ピアニストを撃て』はアメリカのサスペンス小説を原作としている。そして、意識的にアメリカ映画への影響やその場の思いつきを取り入れていったことで、独特なリズムとスタイルが出来たのだろう。この自由さは今観てもなかなか新鮮で、この映画は多くの映画人にも愛されている。最近の映画では『薄氷の殺人(14)』(ディアオ・イーナン監督)で『ピアニストを撃て』にオマージュを捧げたシーンが描かれたりしていた。撮影はヌーヴェル・ヴァーグの代表的カメラマンであるラウル・クタール。彼の存在もこの映画のスタイルには、かなり影響を与えていると思う。主演はシャルル・アズナヴール。言わずと知れたフランスのシンガー・ソングライターで、日本にもよく来日していたが、2018年に亡くなった。一度ライブに行っておくべきだった。
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