うるぐす

溺れるナイフのうるぐすのレビュー・感想・評価

溺れるナイフ(2016年製作の映画)
3.9
「ぜーんぶ俺のもんじゃ!」

これは、大食いの少年が鉄板焼き屋さんでヘラ両手に言った台詞…ではなく、
菅田将暉演じるコウ、もうその名の通り神々しいほどの男が言った台詞です。

そう言い切れる「全能感」。これこそがこの映画に貫通するテーマなのではないか。そう、「空も飛べるはず」と思ってた時代が僕にも他の人にもきっとあったわけで、その若さゆえの清々しさと美しさは誰にも侵害されないわけです。
で、その全能感が揺らぎ始めるのが中学から高校の間だと思うのです。

前半、夏芽(小松菜奈)もコウ(菅田将暉)も全能なんですよ。コウなんて、もう「お前は神か!?」ってこめかみ抑えた出川哲郎に言い放たれるんじゃないかってレベル。夏芽は田舎への引越しなんかがあってちょっと揺らいだものの、(だからこそコウに圧倒的に惹かれるわけで)写真集の話が来てコウに並んだと思えるんですよ。
小松菜奈と菅田将暉。そりゃあんたら若手の男女の全能の神ですがな。にしても、この2人美しすぎて性別とかの次元じゃない。なんだ神々しいなぁ。

で、そっから、自分がもしかしたら全能じゃないのかな?って揺らぐんですよ。2人とも。物語の転機となる事件で。そこから2人は別の路線に別れてしまうんですよ。全能ではないことを受け入れられずにもがき苦しむコウと、受け入れてその場の自分を飲み込む夏芽。それでも、やっぱり2人揃ったらこの世は全て私たちのものだよね、ってことなんですよ。

とことん、2人だけの世界なんですよ。この清々しさ。潔く柔く美しい。
景色も街も全てが美しい。

よくもまあこんなにも詰め込んだなと思います。

あと、重岡くんの「おら東京さ行くだ」最高すぎて腹抱えて笑いました。
あと、眉毛の時のシーン、構図から何からめちゃくちゃ美しくて楽しかった。



はっきり言って、これだけ監督がフルスイングしてるのならば、観てる側は自分の手で自分を叩くか相手を叩くかするしかなくなるんですよ。俺は、自分の手と手を叩き合いました。

好きです!
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