ぎー

ガタカのぎーのレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
4.0
「そんなこと不可能よ」「君は不可能なことに囚われてないか?みんな欠点を探して、それしか見えてない。こんな言葉を君に話しても何の意味もないかもしれないけど、できるんだ。可能なんだよ。」
「なんてお礼を言えばいいのか」「いや、僕の方が多くをもらった。僕は体を貸しただけだ。おまえは僕に夢を貸してくれた」
実は映画の名前すら聞いたことなかった。
わりと映画好きな方なのを自負してるはずなのに。
調べてみると、SF映画の傑作で、下手したら「好きなSF映画は?」って聞いたら、片手くらいの順位で出てくるくらいの映画だったらしい。
その事もそうだし、映画を見てみて思ったけど、本当に世界には魅力的な映画がいっぱいある。
この映画が凄いのは、SF映画でもあり、サスペンス映画でもあり、ラブロマンスでもあり、そして、ヒューマンドラマでもある。
そして全ての側面において高次元。
基本的に人は人工授精で遺伝子操作で産まれてきて、遺伝子の確率で全ての人生が決定づけられるっていう、ありそうでなかった世界観、SFの設定が面白い。
もしかしたらこういう設定自体は他の映画でもあるかもしれないけど、SF以外のサスペンスとか、ラブロマンスとか、ヒューマンドラマの要素でこの設定がビックリするくらい活かされてて、本当によく出来た映画だと思った。
しかも、無いと思いたいけど、もしかしたら人工授精で多少の遺伝子操作して出産するのが当たり前、なんて世界は現実的に来ちゃうかもしれない、なんて思ったりした。
サスペンス面もすごい。
偽りの人生を送っている主人公が、そうである事が露見しちゃうんじゃ無いか、って終始ビクビクしながら映画を見ることができた。
遺伝子で犯人って決めつけられちゃう当たり、人種差別とかを暗に扱ってるのかと思ったけど、それは考え過ぎか。
そしてラブロマンスとヒューマンドラマ。
もうこれだけよく出来た映画なのに、メッセージはシンプルで普遍的。
人間に不可能なんてない。
才能がない、産まれが良くない、って諦めてる人は、諦める理由を探してるだけだ。
遺伝の確率なんて努力で超えられる!
って事だと思う。
俺の解釈の言葉が稚拙すぎてアレだけど、ものすごく難しい事だし、胸に響いた。
現に沖合までの水泳対決で遺伝操作された弟に主人公が勝った時は、すごい!っていう感想よりも、白状すると、そんな事可能かな?ってどっかで思っちゃってる自分がいた。
そんな事思ってる時点で、俺は主人公みたいにはなれないし、ダメなんだろうな。
そしてビックリするくらいキャストが豪華。
主人公はイーサン・ホークが演じてるけど、ヒロインは『パルプ・フィクション』とか『キル・ビル』とかのユマ・サーマン。
滅茶苦茶美人。
主人公がなりすます元競泳選手が『シャーロック・ホームズ』とか『ファンタスティック・ビースト』とかの、ジュード・ロウ。
滅茶苦茶格好良い。
あといつも遺伝子検査する医師を、『24』とかのザンダー・バークレー。
役柄もあって滅茶苦茶格好良い、シブい。
そして脇役の職場の清掃人をアーネスト・ボーグナイン。
いやいや、この人オスカー俳優だからね。
世界観の設定だけじゃなくって、遺伝子検査の方法や、それに対抗する主人公たちの対抗方法とか、細かい部分まで小技、創造性が効いてる。
SFの設定にワクワクして、サスペンスにドキドキして、ユマ・サーマンの美人さに見惚れて、主人公の努力とそれを生き甲斐にする元競泳選手の生き様、友情に涙する完璧な映画だった。

※以下、映画の内容について
事前に映画の概要についてはさわりだけ知っていて、遺伝子が全ての世界の中で、遺伝子的には劣っている主人公が遺伝子的に優れている人になりすます、っていう筋書きだと。
てっきり何らかの医療的措置で、DNAか何か入れ替えてなりすますのかと思いきや、シンプルに外見似せたり、各種遺伝子検査をその場しのぎでやり過ごすっていう滅茶苦茶アナログな方法だった。
これが逆にサスペンス映画として不可欠なハラハラ感を映画にもたらしてたと思う。

元競泳選手のジェロームがどうして主人公にそこまで協力的なのか、最初は不思議だった。
多分最初は生活のためだったろう。
世界的な選手だったのに選手生命を失って絶望し、活力を失い、誰かに養ってほしかった。
それが、主人公と一緒にいるうちに、主人公の宇宙飛行士になるっていう夢を叶えることがジェロームにとっての夢になった。
この映画は努力すれば叶う、遺伝なんかクソ食らえ、って事がメインテーマだとは思うけど、それは1人じゃ実現できないって事も暗に示してくれている。

それにしてもアナログで他人になりすますの滅茶苦茶大変そう。
普通だったら気が狂うと思う。
とにかく尿のサンプルを仕込んで、血液検査に対応して。
主人公の夢に対する意志が凄まじかったんだろうな。

たった"不適正者"のまつ毛一本で容疑者扱いされるのは論理が飛躍しすぎだと思ったけど、現実世界の人種差別じゃないけど、社会の偏見ってのはそれぐらいのことは起こしかねないよな。

恋人や刑事は、実は主人公と同じように"適性者"を装ってるのかと思ったら違った。

ジェロームが大量のサンプルを用意してるのを見て悲しくなった。
自殺以外に無かったのかな。
個人的には主人公の夢に向かい続ける姿勢に感化されてジェロームにも前向きに生きてもらう、っていうエンディングが良かったけど。

抜き打ちの遺伝子検査結果を書き換えてくれた医師は滅茶苦茶漢だったな。
不適正者にとって主人公は奇跡で、夢で、可能性だったんだろうな。
ぎー

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