ぎー

朝が来るのぎーのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
4.0
【第44回日本アカデミー賞特集3作品目】
【河瀬直美特集2作品目】
これは映画じゃない、もはやドキュメンタリーだ。
子供を授かりたいのに授かれない人。
子供を授かれる状況にないのに、授かった人。
子供を授かる事については、あまりにも運命的ですごい意味を持つことのため、言葉を選ばざるを得ず、なかなか一言で表現できない。
単純なようで複雑。
幸せの絶頂であるようで、不条理さの投影でもある。
皆がその事について、何らかの想いや考えを抱いている。
そしてこの映画はある意味このテーマについて、一つの答えを示した。
この世界に親になれない人はいない、のだと。
生物学的に子供を授かれなくても親になれる。
経済的に社会的に子供を育てられなくても親にななれる。
本作の中で、永作博美演じる佐都子は子供の朝斗くんと血が繋がっていなくても、間違いなく素晴らしい母親。
そして、"広島のお母ちゃん"ひかりも、朝斗くんと法律的な親子関係ではなくても素晴らしい母親。
親の形には色んな形があって良い。
"普通の親子関係"である必要なんてない。
そこに愛情があれば。
だからこの作品は全ての人に向けて作られた作品になっている。
子供を授からなくて悩んでいる人。
子供を授かってしまって悩んでいる人。
子供を授かって幸せな人。
そして、子供とか関係なく幸せな人。
別に価値観は色々、置かれた立場は色々。
だから色んな考えがあって良い。
でも、僕は思う。
親になるというのは至高の喜びだと。
そして、この映画言う通り、その形には色々あって良い。
"子供を授かる""親になる"そういう人生のテーマだから重いし、軽くないし、悩んでる人もいっぱいいる。
でもこの作品の言う通り、明けない夜はない。
全ての人に朝は来る。

全ての立場を丁寧に描写しているから、やや映画の展開が遅く冗長だが、じわじわとその丁寧な描写が胸に迫ってくる。
東京の湾岸のタワーマンションも心地良いし、広島の瀬戸内海の静かな漁村も心地良い。
全てをフラットに描いている。
永作博美は相変わらずの渾身の演技だが、多くの人は邦画の名作『八日目の蝉』を連想しただろう。

改めてこの映画は"親になる"ということがどれだけ価値があって、どれだけかけがえのないことなのか、思い知らさせてくれた。
親になった瞬間、どんな殺人事件よりも子供の幼稚園の喧嘩の方が大ニュースになってしまうのだ。
そして、この世に子供が親の自分に向けてくれる笑顔以上の光景など、存在しないのだ。
ぎー

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