ぎー

ユナイテッド93のぎーのレビュー・感想・評価

ユナイテッド93(2006年製作の映画)
4.0
【第79回アカデミー賞特集1作品目】
9・11を題材とした映画を鑑賞するのはずいぶん久しぶり。
ドキュメンタリー調で描かれていたが、その描写が題材にピッタリだった。
キャストはほぼ全員が無名の俳優、乗員にはプロを配置し、管制関係者は一部実際の関係者を登用する。
その圧倒的なこだわりが、この凄まじいリアリティを生み出したのだろうし、有名俳優や主人公がいないにもかかわらず、僕らを映画に没入させ、感情移入させる。
本作の監督ポール・グリーングラスは傑作『キャプテン・フィリップス』を撮っているが、作風はそれにかなり近しい。
あちらの映画では軍を称賛した一方、本作ではこき下ろしてはいるが。

9・11を題材とした映画作品は数多くあるが、直接的にメインとして題材とした映画としては本作が最高傑作だろう。
そもそも世界の映画史上を牛耳っているのがアメリカで、そのアメリカで9・11が非常にセンシティブだから、なかなか難しい。
が、本作は極力政治色や御涙頂戴要素を削ぎ落としたからこそ上映にこぎつけたのだろうし、結果絶賛を呼び起こしたのだろう。

映画が進み、つまり、時間が経過して時間が進むと悲壮感に包まれ、いたたまれない気持ちで一杯になる。
9・11というとどうしてもWTCこそが象徴的となってしまう中で、ピッツバーグ近郊に墜落した事件を扱ったもの。
乗員乗客は最後まで生きようとした。
その懸命の努力が、間違いなく標的への墜落を回避させたし、都市部への墜落を回避することによって犠牲者を劇的に減らした。
僕らは日常生きていて、このようなことが起こることなど想定もしていない。
(これは3・11にも通ずるが、)想定外なんて事はないということを改めて痛感した。
あらゆる事態に備えることなど難しいが、想定外のことが起こることを知り、認識し、そして想定外のことを少しでも減らすために過去から学ぶことが重要。
そのためにも、この映画は一度は視聴することを強く強くお勧めする。
周知のことだが、9・11で亡くなったのは罪のない一般人である。
どうして彼らが犠牲にならなければいけないのか?
戦争や紛争のない平和を改めて強く欲する気持ちになった。
ぎー

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