ぎー

空の青さを知る人よのぎーのレビュー・感想・評価

空の青さを知る人よ(2019年製作の映画)
4.0
【第43回日本アカデミー賞特集】
【長井龍雪特集1作品目】
"これは、せつなくてふしぎな、二度目の初恋の物語"
「井の中の蛙大海を知らず。されど空の青さを知る。」
人生で最も好きな言葉。
それをテーマにした映画。
個人的にドンピシャだった。
大海を知ることの大切さを否定するわけじゃない。
でも、空の青さを知ることも同じくらい大切。
自分も含めて多くの人が、人生を歩んでいくに従って井戸からで出て、河を知り、湖を知り、海を知り、グローバルに活躍する人は大海を知っていく。
その過程で、井戸で暮らしていた時は知っていた、大切にしていた空の青さを忘れていったりする。
空の青さはかけがえのないものなのに。
SFな設定を駆使して、空の青さを知る慎之介と大海を知る慎之介を見事に対比して描くことで、真正面からその価値観を描いていた。
決して井戸の中に閉じこもる人生を歩みたいとは思わない。
でも、それ以上に空の青さを忘れる人にはなりたくない。

長井監督は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』も画の綺麗さが凄まじかったが、本作は輪をかけて凄かった。
実写よりもリアルで、実写よりも遥かに繊細で、そして、美しかった。
本作も序盤は、突然慎之介 の幽霊が現れて、といったSFのような設定もあってなかなかスムーズに話に入り込めなかったけど、画の綺麗さで映画にどんだんのめり込んで行った。

何よりもラストはお洒落で美しかった。
結果的に高校生の"空の青さを知る"慎之介は消えてしまうが、それは彼の存在が消えることではない。
現在の現実の慎之介が"空の青さ"を思い出したのだ。
本当に大切なものは何なのかということを。
そしてその陰で、大好きな姉と大好きな先輩の男を自分抜きで帰らせる主人公あおの。
そんな主人公あおのの成長に気づき、自分のために生きていいんだって認識して、自分の愛する男が大好きなツナマヨおにぎりを作ってみようかなってこぼすあかね。
こんな甘酸っぱくてどストレートな、でも心を動かすラストはなかなかない。
ぎー

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