うるぐす

アズミ・ハルコは行方不明のうるぐすのレビュー・感想・評価

アズミ・ハルコは行方不明(2016年製作の映画)
3.8
復讐を通した人間賛歌。

世界観に逃げてるってコメントしてる人こそ監督以上に世界観という言葉を使って説明することから逃げてるよね、なんて思いながらレビュー書くわけですが、まず撮り方としては上手いですよね。同じカットを序盤、中盤、終盤と、繰り返し使うことで、予算は抑えつつ、物語の輪郭をはっきり印象付けるわけです。序盤ではよく分からなかったものが見終わると繋がる。このかたちは観てるこっち側からすると気持ちいい。ただ、カットの切り替え早すぎるなとは思いましたけど。

●観てない人向け
まず高畑充希の話をしましょう。僕、高畑充希大好きなんですよ。あまちゃん以降で観た朝ドラ『とと姉ちゃん』だけですし、『問題のあるレストラン』『いつ恋』最高でした。『過保護のカホコ』が7月から始まるんですけどそれも観ます。はい。
そんな僕からして、今回の高畑充希。泣いちゃいます。もともとちょっと不幸を背負った役がめちゃめちゃ上手くて似合うんですが、今回のメンヘラビッチ役。上手すぎて心配になったり、守りたくなったりします。実際は連絡鬱陶しくなっちゃうかもですが。てくらいに高畑充希の演技が最高です。その分、僕はダメージを受けるわけですが、僕のことなんて良いのです。つまりオススメです。ジャグジーのシーンなんてもう、、。涙
あと、『桐島、部活辞めるってよ』とは違って、アズミハルコが出ないなんてことはないです。しっかり出てます。

●観てる人も観てない人も
この物語の根底にあるのは「閉塞感」です。同じような毎日が繰り返されるだけで、その日々からけっして抜け出すことができずにいる。(アズミハルコの家にいる痴呆症の祖母がその繰り返しの象徴だったと思います。)その毎日が生き生きしてるものなら良いけど、家の中にあるのは諦めや怒りの音、人間関係は狭くすぐに噂として広まる。面白いことしたいと思っても映画を真似て壁に落書きするくらい。その閉塞感を打ち破れずにモヤモヤし続けるわけですよ。そうなると、人によっては生きる意味がわからなくなったりもするわけです。それは全部閉塞感なんですよ。肉体的にも精神的にもそれに支配されちゃうんです。
それと同時にもう一つ重要なテーマに「復讐」がある。男狩りをする女子高生集団は男への復讐と称して自らの行動を正当化する。実はこの集団がこの映画における神なんですよね。JKって神みたいなとこあるじゃないですか。マジパネエだけで乗り切っちゃうみたいな。と言うのは、復讐ってめちゃめちゃネガティヴなことと捉えられがちなんだけど実はポジティブじゃね?パネエっしょ?ってことなんですよ。動機はネガティヴですよ。許せない。ムカつく。殺したい…でも、その結果、行動するじゃないですか。復讐って。行動、つまりはアクティブ、ポジティブなんですよ。だから、やられてやり返さずに泣き寝入りは二流。やられたらやり返す。これは一流なんですね。世の中の「自分が死んだら世界が変わる」と思ってる人たちに是非見てもらいたい。「いじめで自殺する奴が一番アホ」とこの国で一番面白い人は言ってました。

ただ、アズミハルコは「やられたらやり返す」なんてアホのすることって言い切るわけです。
行方不明になったはずの女が、まさかまさかのこの世の正しい復讐の仕方を教えてくれたりする映画です。

面白いっすよ。かなり。
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