ガブXスカイウォーカー

うる星やつら3 リメンバー・マイラブのガブXスカイウォーカーのレビュー・感想・評価

3.9
今作のコンセプトが、それまでの「ラムがあたるを追いかける」ではなく、「あたるがラムを追いかける」ことは有名だが、何より驚かされたのは、ラムがいなくなったことにより、弁天、お雪、ラン、テンたちエイリアンは地球を去り、幸せな時間連鎖が消滅することである。しのぶは怪力を出せなくなり、面堂はタコの心を理解出来なくなる。そして、あたるたちは高校3年生に進級する(最後にはリセットされてまた高校2年生に戻るけど)。そうか、そうだったのかと当時、この解釈には驚かされた。

さらに総作画監督:もりやまゆうじ、作画監督:土器手司による作画はある意味、超一流(原画にはあの庵野秀明も参加!)。キャラたちの顔がカットによって変わるなど、元気いっぱいでまさに暴走状態。観ていて実に楽しい。

だが、ギャグは空回りしっぱなしだ。当時もしらけたが、今回数十年ぶりに見てもその印象は変わらない。でもラムとカバになったあたるが涙を流し抱き合うシーンは平野文と古川登志夫の名演もあって感動的でさえある。

金春智子の脚本、やまざきかずおの演出はメルヘンとオカルトで観客たちを酔わせ、新解釈を加えて、最終回レベルのテンションでラムとあたるの恋愛を描き切っている。今作は前作『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(押井守監督・1982年)の影に隠れがちだが、スタジオ・ディーン(TV版130話目以降を担当)による『うる星やつら』の集大成とも言える、良作SFラブコメなのだ。

ここ数十年、美少女の大勢登場するハーレムアニメやラブコメが大量に製造されているが、『うる星やつら』はまさにその原点、いや元祖と言ってもいい(『ケロロ軍曹』、『涼宮ハルヒ』シリーズなどにもその影響は多く見て取れる)。若いアニメファンにはぜひ『うる星やつら』をどれでもいいから観て頂きたい。