バランシーン

ザ・ディスカバリーのバランシーンのレビュー・感想・評価

ザ・ディスカバリー(2017年製作の映画)
3.9
とにかく素材が最高に唆るんですよね。
「死後の世界が科学的に証明された世界」
これだけで、ご飯何杯もいけそうじゃないですか(笑)
その科学的な証明を行った博士のインタビューから幕が開き、科学的証明とは“死後に肉体から離れる脳の波長を捕捉した”ということであり、インタビュー中にスタッフの1人が自殺するというショッキングなカットで終わる。掴みもいいです!ワクワクです。

…が、この後の展開はかなり地味になります。フィーチャーされるのは自殺者の増加。ま、確かにそうなることは予測できなくはないですが、レイシーが言うように無茶苦茶な論理で殺人しまくりとか(やまゆり園事件の植松を思い出しました)、メジャー・マイナー問わず宗教の過剰な跋扈とか、人々の思考や価値に大きな影響を及ぼすことは必至なのにそこの部分の描写は皆無(まあ、そんなことしてたら尺がいくらあっても足りないか)。

物足りなさはありますが、まあでもロマンスに落とし込まざるを得ないことは理解でき、そしてそのロマンス描写もミニマムでありながら悪くなく、僕的には楽しめました。
ラストの「死後の世界」の具体的な描写は、逆に意地が悪くて好きです。
別の場所に行ったって全てが変わるわけじゃない、まずはここで学ばない限り変わりようがない、とモラル的に主人公に語らせておきながらのマルチバースオチはブラックジョークですよね。

とっても魅力的で良質な素材を手にしながら、料理しきれなかった感、でも素材いいからそれなりに美味しい、という感じですかね。
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