バランシーン

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへのバランシーンのレビュー・感想・評価

3.9
ヴェンダースmeetsウォン・カーウァイ!
中国からいよいよこの種の映画的才能が出てくるようになったんだなぁ、と感慨深いです。

ストーリーはあってないようなもので、時間軸も消失しています。辛うじて分かるのは、主人公は何らか消えない痛みを、清算しようとしているということ。それは、自分を捨てた母親のことなのかもしれないし、最愛と信じるワン・チーウェンのことなのかもしれない。
様々なイメージが飛び交う中、前半はとにかく閉塞感。全く「抜け感」がないので、とても息苦しく、ストーリーも追えないのでそりゃ脱落者続出だろうな、と(苦笑)乱れたリップさえ美しいタン・ウェイのファムファタール感なければ、僕もキツかったです。


そして、良くも悪くも話題の後半。60有余分の3D長回しです。このパートに入ってすぐに「ああ、これは夢の話というより、死ぬ間際に人生の追想として見るという例の『走馬灯』ってヤツのイメージ化なんじゃないか?」と勝手に思い至り、完全に作品に乗れました(笑)
白猫への贖罪。母親との関係の清算。ワン・チーウェンとなる前の運命の女との切望してきた関係のやり直し…。
夏至から冬至に物語は移ったが、夜(人生)は短すぎる。だけど一瞬のはずの花火は尽きることなく燃え続けている…。最後の畳みかけは何とも感傷的で揺さぶられました。
人生の最後、こうして諸々を受け入れていくのか、と思うと悪くないような(笑)そしてラストに流れる「墨緑的夜」(これは恋する惑星での夢中人を彷彿とさせます)でとにかくエモーショナルな読後感へ。

ビー・ガン、僕は次作も確実に観ますね。ただ、ストーリーテリングには課題があるのかな?そこも含めて、どんなアプローチでくるのか?久々に楽しみな作家を発見した気分です!
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