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パディントン 2のnetfilmsのレビュー・感想・評価

パディントン 2(2017年製作の映画)
4.0
 ペルーのジャングルから憧れの国イギリス・ロンドンへ、ウェストミンスターの南西部にあるパディントン駅でブラウン家の人々と出会った前作から4年、叔父パストゥーゾの亡き意思を受け継いだ茶目っ気たっぷりの若き孫"パディントン"はブラウン家で元気に暮らしている。前作で"パディントン"の存在を最後まで疑った父ヘンリー・ブラウン(ヒュー・ボネヴィル)は昇進レースで部下に先を越され、中年の悲哀を漂わせている。一貫して彼を暖かい目で見守った母メアリー(サリー・ホーキンス)はフランスへの遠泳で大忙し。思春期の娘のジュディ(マデリン・ハリス)は失恋から社会部の記者活動に打ち込み、年頃になった息子のジョナサン(サミュエル・ジョスリン)はラッパー気取りだが、SL好きというナードな趣味を隠し切れない。正義感に強いお婆ちゃんバード夫人(ジュリー・ウォルターズ)は今回も正義感たっぷりに動き回る。前作でペルーからロンドンへやって来た"パディントン"は移民としての素地を漂わせていたし、ニコール・キッドマンに熱視線を送ったカリーさん(ピーター・カパルディ)ら口煩い隣人たちはいるものの、ロンドンの街へ溶け込んでいるかに見えた。しかし街の人々の「偏見と好奇の目」が"パディントン"を刑務所へ送り込むことになる。

 とびきりの元気とマーマレードを届ける可愛いクマの冒険譚に今回登場するのは、フェニックス・ブキャナン(ヒュー・グラント)という落ち目の俳優に他ならない。『キングスマン:ゴールデン・サークル』のエルトン・ジョン以上のヒュー様の自虐的な姿には面白いを通り越して、90年代女子たちの悲鳴が飛ぶ 笑。クマの"パディントン"という年齢を超越したキャラクターと、皮肉にも不死鳥と名付けられた年齢に抗えないフェニックス・ブキャナンの対比、同じアイテムを奪い合う滑稽な姿、"パディントン"が慣れないバイトに励む姿には喜劇王チャップリンの影がちらつく。夢のような遊園地や絵本から飛び出したようなロンドンの街並み、アンティークの一つ一つにもこだわりを見せる今作の英国の粋を集めた煌めくような世界観は、堅牢な刑務所の描写に対してもブレることはない。赤のソックスで真っ赤に染まるボーダーの囚人服、暴力的と恐れられるナックルズ(ブレンダン・グリーソン)とも意気投合する"パディントン"の姿は、人を見た目で判断しない彼の寛容さの賜物だろう。それとは対照的にやや図式的にステレオタイプに描かれるカリーさんや判事や女性警官の姿には賛否両論あるだろうが、気球による逃避行から壮大なスケールのトレイン・アクション、海底からの救出へと向かうアクションの結び目は問答無用に素晴らしい。Brexit以降の皮肉をチャップリンのような滑稽さで塗したナイスな続編は不寛容な英国の今を憂いている。
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