チョマサ

ハドソン川の奇跡のチョマサのネタバレレビュー・内容・結末

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

メーデーという航空機事故の調査を扱ったドキュメンタリーシリーズで、この不時着水事故については知っていたので、これをどうやって映画にするんだろうと気になっていた。

みんな結末を知っているほど有名な事件だし、大雑把にいうと飛行機が不時着するだけのお話。映画にして最後まで飽きさせない事ってできるのか疑問だったのだけど、最後まで面白い映画だった。この映画のスタッフはすごい。

映画が不時着するまでを終始描かずに、事故後のサリー機長に焦点を合わせているのが、この映画が上手くいったポイントだと思う。このことによって機長と副機長、彼らの家族の情況に、公聴会の場面も描くことができて、見せ場を複数作れている。

『アルゴ』が脱出劇を最初から最後まで追いかけていくやり方だったけど、結局最後には助かることが分かっていたので、それまでの障害とかを見ても「どうせ助かるんだよな」と見ていて面白くなかったことを思い出した。この映画は、そういったことに陥っていない。

冒頭で飛行機が墜落する悪夢が入るのだけど、劇中の「この町では特にね」の台詞で、もし失敗したらの不安を表すこの悪夢が、911テロ事件の恐怖が今だ残っていることも伝えていると思えた。サリーの悪夢や幻視の他に、飛行機が不時着するときの様子が挿入されるのだけど、『羅生門』みたいに挿入されるたびに細部が違っているのが面白かった。

映画はメーデーでも紹介されたことも描写されていて、しかも当時の乗客や機長たちスタッフも協力しているので、かなり事実に忠実だと思う。エンドロールで本人たちが登場するのもよかった。

俳優陣はみんなよかった。アーロン・エッカートのジェフが「スニッカーズが5ドルもするんだぜ」と離すところや機長を励ますところとかいい。
女優陣だとNTSBのエリザベス捜査官としてアンナ・ガンが出てて興奮した。『ブレイキング・バッド』のスカイラーじゃんと見てて驚いたな。メーデーに出てた実際に担当した捜査官の女性に似てた。

この映画だとNTSBが悪役に描かれてる。メーデーを見ると彼らの仕事が犯人を捜すといったことではなく、航空業界の安全を守ることだと思っていたので、この描き方はちょっと驚いた。本人にも取材してると思うので、たぶんこういった強引な捜査もあったってことなんだろうか。映画でも、自分たちの捜査ミスを認めているので、描き方は一面的でなくバランスをとっている。

追記
パンフレットも映画の解説としても十分な内容だった。(以下敬称略)町山智浩、ピーター・バラカン、杉江弘、芝山幹郎によるレビューや航空についての解説。神武団史郎、遠山純生らによるイーストウッドについての解説とフィルモグラフィー、小西未来によるキャストと監督へのインタビュー、そしてプロダクションノートと、買ってよかったと思える内容でした。
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