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光りの墓のsskのレビュー・感想・評価

光りの墓(2015年製作の映画)
4.4
「なんで不可解で心地良いんでしょう」とつい言いたくなる映画。もはや、キアロスタミのように映像の見方を観客に選択させるというよりは完全に委ねているかのようなものである。しかしそれは、ある意味アートというものの本性なのではないかと思ってしまうばかりだ。
眠り病にかかっている兵士がいる病院という視覚的にも面白く分かりやすい場所の中で一人のタイのおばさんと生活を共にする。パルムドール受賞作『ブンミおじさんの森』と同様、出演するジェンの歩速に合わせて映画が作られていて、それに合わせながら、カメラが現実の中に見出す形を纏った超現実を愉しむような設計になっている。
色の変化する安眠装置や、脱糞シーン、空に浮かぶ微生物など、他の映画では見られない面白映像を見るだけでも価値があるのだが、死んだ王たちの墓の上云々等々物語自体にも大分想像の余地があるようで十分興味深い。とはいえ、私はまだまだその大きな世界の上に揺れて浮かんでいる卑小な塊だったのかもしれないと只管思った。
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