曇天

コンカッションの曇天のレビュー・感想・評価

コンカッション(2015年製作の映画)
4.3
アメリカの病理がこれでもかと詰め込まれてる。

主人公オマルはアメフト競技中の脳への衝撃が原因で起こる認知障害を偶然発見する。何度も脳が揺さぶられることで溜まるタンパク質によって神経に負荷がかかり普通ではありえない年齢でアルツハイマーを発症する。その病気の原因はアメフトというスポーツそのもの。だからこれを告発することはナショナル・フットボール・リーグに喧嘩を売り、巨大なアメフト産業の是非を問うことにつながる。

しかし、やはり、それは簡単なことではなくアメフト産業を正義と信じている関係者たちが様々な妨害工作を仕掛けてくる。脳障害とアメフトとの因果関係を棚に上げてNFLの恩恵を語る者がいたり、オマルを脳震盪を議論する公聴会に参加させなかったり、オマルの上司を不当に逮捕させたり、いつのギャング映画だと言わんばかりの前時代的手法をとる。

病気自体はパンチドランカーと同じで目に見えない形で選手の人格を蝕む。CTに映らず、死んだ脳からでないと症状の有無が示せないという特性と妨害工作も手伝って、なかなか因果関係を認めさせることができない。科学の新発見とそれを拒む現状維持派との戦いで、これもまるで中世の時代を思わせる。

でもここまで時代遅れなものを見せられても、やはりアメリカはこういう国だという確信を強めてしまうだけで、さほど驚くことができなかった。極端な資本主義はいつも金儲けが目的のクセに色んな大義名分も上乗せして、支持者が増えていくにつれ色んな団体を取り込んで理論武装、自分達にとって不都合な真実は隠匿。軍隊、医療、不動産、小売業、どこをとっても同じ構図。同じような搾取でうんざりする。
辛くも報われたこの映画の話からの教訓は大きいはず。
曇天

曇天