端的に言えば日本版「セブン」。殺人鬼とそれを追う刑事のサイコサスペンス。
描きたいことは全て描ききっているし、常に水が滴っているジメッとしたビジュアルも申し分ない。小栗旬の演技も良いし、大まかなストーリーテリングはセブンに倣っていて良い。
切り刻まれていたり、生首だったり、裸体だったり、G指定のわりにはグロデスクで、WOWOWあたりが映倫に媚びたのがすごい分かる。この映画がG指定で、これから公開されるLGBTの映画はR18+っていうところに、映倫の必要性の無さが伺える。
前半部分は面白いものの、後半からは「家族」のテーマに帰結するよう、回想シーンを多く取り入れていて、それが映画のテンポを悪くさせている。たしかに、監督の言う「ネガティブになりがちな素材だが、あえてこの出来事から失ったものを再確認するポジティブな物語にした」という意図は理解できるが、映画の構成との相性が悪くなっている。スリラー・ホラーが故に、流れが気になってしまう。
また、上記のテーマから、実に陳腐な終わり方をしてしまうのも良くない。原作のせいか?テーマのせいか?製作委員会のせいか?セブンという絶対に避けて通れない比較対象があるため、どうにも違和感が残るし、最後にフェイントをかける真似をするのが良くなかった。
そして、これは劇場公開時のことではあるが、殺人鬼のカエル役のキャストを平然と出すという広報の馬鹿さ加減に呆れた。絶対にセブン見ているはずなのに、なんでこういうことするのか。
カエル役の演技はシッカリと言われたことをやっていて素晴らしいと思うが、演出する側が「典型的で陳腐なサイコパスの演技」ということを分かっていない。故に、味気のない印象のないサイコパスになっている。
中盤のカーチェイスもモッサリしたアクションで邦画の技術力のなさも伺える。
不満もあるが、まあ軽く見る分には楽しく見れる映画。