チョマサ

日本で一番悪い奴らのチョマサのネタバレレビュー・内容・結末

日本で一番悪い奴ら(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

以前、感動ポルノがどうたらこうたら書いたけども、泣くのが悪いんかお前?っていうわけではない。別にどんな理由で泣いたっていい。ただ泣く準備をしてくる馬鹿がいるかと思うのです。

映画を見て泣く理由っていうと、辛いできごとに共感することがひとつ挙げられる。この映画はそういう意味では辛すぎた。吐き気がするほど辛さに共感できたのは初めてで、自然と涙が浮かんできたのも初めてだった。

最初は手柄を立てたいだけだったのに、調子に乗っちゃっていつのまにか組織の動向を左右する位置に立ってしまう。それで役立たずになったら捨てられる。もうあんなに幅を利かせてたやつが、上司の要求にひいこら言いながら銃を仕入れて金集めに苦心して自転車操業をやってるのはきつかった。働いてて無茶な要求に骨をおったことがある人には、諸星のこき使われ方が身に沁みるんじゃないだろうか。家にある少ない拳銃を集めてる様子は泣けます。

しかも失敗して周りがピリピリした空気になったり露骨に態度を変えたり疎遠になるのは嫌だったな。山辺に子供へのお土産を渡すんだけど、とっくに離婚してることも知らなかったのは、疎遠ぶりがよく出てたな。

バカで滑稽な話なのだ。点数集めにばかり目がいって、ずっと高い点をキープしないといけなくなって自滅。

それと羽振り良すぎる人間が落ちぶれていくのは見ていてきつい。あんなに派手なスーツを着てた男が、最後はポロシャツにジャンパーや短パンにシャツ。シャブ中になったから水が手放せないのも落伍者な感じが出てる。札幌から夕張への転勤も、ダメになったのが分かりやすい。

銃をあげることが一番の手柄になると思い込んでるから、100キロ以上の薬をそのまま通してしまうほどマヌケになってるのはおもしろくもあるし辛くもあった。

綾野剛が太ってて全然かっこよくないことに驚いたけど、諸星は成金のときにみんなに金やら家やらあげることで人望を集めた。その癖が抜けないから、貧乏になってからもこまっちいおもちゃを渡したりする。それを私に行く山辺も、娘に会う理由にちょうどいいとか思ってんだろうか。ただ、諸星がオッサンになってからの演技はちょっと飽きてきた。綾野剛の演技が下手とかじゃなく、いろいろな演技が出てこないとかじゃなくて、諸星がダメなところばかり長く続くのでそれに飽きたんだと思う。

出てくる奴がみんなおもしろい。村井の肝の据わった感じは憧れたくなるんだけど、マジでヤバくなったときや逮捕されたときに性根が見える。子どもを産まなきゃいい殺せばいいみたいな発言は、ポルポトかよと思ったけど、自分の仕事で安全が手に入るわけないし、こうして手柄を立てて遊ぶのが正しいとか思ってんだろうな。

中村獅童のヤクザはハマってるし、ずっと賢い感じが出てくるのがよかった。あのいい仲間ですよって雰囲気を出してて、実際は逃げ足が速いギャップがいい。皆が見たいヤクザを演じてるなと思う。

諸星とはじめて会った時に諸星がビビりながらお茶を飲む場面とか笑える場面も多い。カニを食いながら拳銃を撃ったりとか、後半が落ちていくばっかりなんで、コメディっぽくは感じなかった。

木下の演技は浮いてると目にしたけど、見ていてそこまで気にはならなかった。てか、あの人怒るときの顔がいつも同じ顔だから下手と言われるんじゃないだろうか。あの拷問の場面はふたりがどん底に落ちるクライマックスで最高の場面だ。

パンフレットは町山さんが書いてるフィルムクリティックもおもしろいんだけど、いちばん嬉しかったのはメインキャストのインタビューが1Pずつ5人分あること。これはほんとうによかった。池上さんと白石さんの対談に出てくる削除された場面がどれもこれもおもしろいので観たかったなぁ。
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