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ガキ帝国のblacknessfallのレビュー・感想・評価

ガキ帝国(1981年製作の映画)
3.5
井筒監督の映画でこんな洋画的なリリカルな感触のって他にない気がする。

1960年代後半の不良達の青春群像劇で在日の人にスポット当ててるから、"パッチギ!"と被るとこ多いけど、こっちはパッチギ!と違ってテーマとして据えてると言うより、舞台になった場所の必然性として登場させてるのでトーンがかなり違う。こーゆー人達がいるんですよ!?分かった?みたいな啓蒙的な強さがない。でも、それが間違いなく日常として彼等は我々と同じ世界の住人だという事実を強く見る側に意識させる効果を生んでいる。
しびれるぐらいこの塩梅がいいんだよ!井筒さんとは思えない絶妙さなんだよな笑
年を重ねて主張が出すぎて良くも悪くも特濃になってしまった今となっては出せない味だな。

今となってはと言えば島田紳助。主演の一人でカリスマ不良なんだけど、ライバルの上昇志向の強い不良がヤクザに取り入るのを見て「ヤクザみたいなしょーもない者になりたいんか!?」みたいなこと言うシーンがある。今となっては完全にお前が言うな案件になってて受けた😂

時代は80年代前半になるけど不良の日常画いたって意味で"BLOW THE NIGHT! 夜をぶっとばせ!"を思い出す。
出てくる不良のファッション、口調、雰囲気とか似てるとこもあるんだけど、"BLOW THE NIGHT! 夜をぶっとばせ"の不良が全体的に虚ろでダウナーだったのに対してこっちの不良達はかなり血気盛んで泥臭くアッパー、同じような閉塞感に苛まれてるはずなのにこの違いは何なんだろう?。60年代後半と80年代前半の違いなんだろうか?

80年代てことで思ったのは"夜をぶっとばせ"に出てくる街並みの景観が80年代後期とそれと比べて暗く煤けてくすんだ感じなんだよな。80年代はバブル前と後で分断されてる気がした。
80年代でもバブル期の"ビーバップ・ハイスクール"になってくると虚ろさも泥臭くさもなく、ポップで影のない快活な不良の暴力活劇になってるのが象徴的な気がする。

自分が洋の東西を問わず不良の映画に興味を惹かれるのは不良の在り方や映し方にその時代の空気が色濃く反映されるからなのかも?と思った。

あと井筒監督、最近映画撮ってないよね。何でだろう?それこそ時代のせいなのかな?
まだ"パッチギ!"の頃までは多少はあった在日の人達の立場や境遇を思いやる寛容と謙虚さがこの国から無くなったってことなのかな?
まあ、そうだろうな。毎週どこかで排外主義者のヘイト・デモが行われ、兇悪事件が起これば「犯人は在日に違いない」て書き込みがネットに溢れる美しい国なんで笑
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